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後日譚の隣。1
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ピピピピ……ピピピピ……ピピピピ……。
「う”ぅ……………、ぁ…さ………」
毎朝お馴染みのアラーム音を部屋中に鳴り響かせている元凶を手探りで探す。
いつの間にか枕の下に潜り込んでいたそれを見つけた頃には、大音量で流れ続ける機械音によって、すっかり脳はまどろみから覚めていた。
のそりと体を起こし、ベッドから這い出る。
じっとりという程ではないが微量ながらもかいている寝汗に、季節の移り変わりを感じる。
布団を一枚減らそうか、などと考えながら窓のある場所まで歩き、カーテンを開け放つ。
途端に差し込んできた、柔らかながらも夏の予感を微かに感じさせる初夏の光に、俺はほんの少し目を細めた。
眼下の街はすでに動き出していて、通勤するサラリーマンや、玄関先を掃除しながらお隣と挨拶を交わす主婦の姿もちらほらと見える。
そして。
ささやかな喧騒をひとしきり見渡してから、俺は通りを挟んで向かいに建っている一軒家の、さらに未だ厚く外の世界を遮断している部屋の窓を見る。
…どこかの誰かさん程ではないが、俺もどちらかといえば朝は弱い方だ。
春眠暁を覚えず、とはよく言ったもので、できるならば一生暁なんて覚えたくはない。
それが今こうしてちゃんと起きることができているのは、あの部屋の主のおかげでもあるのだろう。少し…本当にちょっとだけど。あいつに”おかげ”なんていうのは癪だけど。
…もしかして、こういう思考が甘やかしているということなのだろうか。
閑話休題。小さなあくびと大きな伸びを一つずつして
よし、と呟くと俺はカーテンを閉め、甘やかしに行くための支度に取り掛かった。
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