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迷い恋にしおりをはさみました!
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迷い恋
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「あっ、雄大君、見つけたぁ〜!!」
店長の明るい声にパートの菊池と話していた雄大は、隠れるように顔を背けた。
「雄大君、探したよ〜。」
「いやいや、探さないでしょう?こんな狭い店内で。てか僕、今出勤したのんで。」
雄大はスタスタと歩いて、どうにか店長を巻こうとした。
「まぁ、そんなに急がなくていいよー。今日は入荷少ないし。」
「あっ、でも、もうディスプレイ変えなきゃ。こどもの日とかなんや…」
(しまった!!)
雄大は急いで両手で口を押さえた。
「そうなんだよー、ゴールデンウィークなんだよー。」
待ってましたとばかり、店長は猫なで声で雄大にすり寄った。
「マジっすか。ゴールデンウィークですか…では。」
「ちょっ、ちょっと待って!」
店長は雄大が着ていた薄いパープル色のパーカーのフードを掴んだ。
「やだやだやだ!!菊池さんから聞きましたよ!!ゴールデンウィーク、店長、実家に帰らないって言ったじゃないですか!」
「言ったんだけど…嫁さんの弟さんが結婚相手連れてくるから、ゴールデンウィークは親戚一同集まるように言われたんだよー。頼むよ、雄大君。」
「やたやだやだ!店長、3、4日は連休くれるって言ったじゃないですかー!」
「そうなんだけど…だって、あっちの両親が折角みんなが集まるからって、旅行の予定まで立てちゃってて。。嫁さんも行く気マンマンで。。頼むよ!雄大君!!」
「ぎゃーぐるしいー!!大体、人が少な過ぎるんですよー!」
「そうなんだけど…菊池さんは1日出てくれるし、上村君もゴールデンウィーク間は昼間も出てくれるから!」
「上村….?」
雄大が抵抗をやめると、店長もようやく手を離した。
「ゴールデンウィーク明けたら、早急に人を入れるようにするから。ここ踏ん張って…ねっ!?」
「……」
手をあわせる頭を下げる店長を前にシュンとししてしまった。
「…雄大君?もしかして、予定があった?」
「えっ!?」
「そうだとしたら、嫁さんと子供だけ行かせればいいから!」
あせあせと店長は手を振った。
そのグルグルと回ったような店長の目からは、奥さんの義理の両親への言葉を考えて、パニックになっている感じが伺えた。
「いいですよ。連休出ても。」
「えっ?でも…」
店長の気持ちを汲んでるつもりだが、笑顔で店長の顔を見ることは出来ず、目をそらせて答えた。
「別に予定はないですし。」
(連休のこと…この前は会社の人と一緒だったから、言ってなかったし。。)
「ありがとう!雄大君!お土産買ってくるね!!」
「それより、時給あげて下さい。」
「うんうん、饅頭以外にしとくから!」
ルンルンと去っていく店長の後ろ姿を見ながら、深いため息をついた。
(なんだかな…)
距離を埋めることができない自分を、上村の言葉が引っかかる自分も、自分は好きになる資格がないのではないかと思ってしまう。
(僕は…加藤さんが…好き?)
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