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5月の空にしおりをはさみました!
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5月の空
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「鍵、付け替えてよね!」
5月の空、青空が眩しかった。
「あんな古臭い形のドアノブ、鍵あっても無くても同じよ。カードを鍵のある隙間に入れて、ガチャガチャしながら差し込むのよ。すごいでしょう?」
詩央里は雄大の少し前を髪を揺らしながら歩いていた。
「だから僕のKカードも傷だらけに…」
「クレジットカードでも開けれるのよ。」
「いや、犯罪だからね!」
雄大はトテテテと詩央里に追いつくように走った。
「大体、姉ちゃんも今日仕事じゃなかったの?」
「今日は生理休暇よ。」
カツカツカツとピンヒールでアスファルトを蹴る詩央里が平気な顔でそう言った。
「……僕と同じじゃん。。」
「さぁ、行くわよ!!春物セールと夏物買わなきゃ!」
「やっぱり荷物持ちじゃん!」
平日の街は忙しそうに歩く人とゆっくりお店を覗き込む人との温度差が激しかった。
「私、銀行寄って行くから。」
「あんまり下ろすな…ゲフッ!!」
雄大の後頭部に詩央里のバッグが直撃した。
カツカツカツ
「いってぇ…ったくあいつ貯金してんのかよ。。」
雄大は頭をさすりながら、人の姿がたくさん見える銀行に入っていく詩央里の後ろ姿を見た。
「ちぇ…。」
チカッと眩しい太陽の光が顔に当たった。
空を見上げると雲ひとつない青空がどこまでも広がっていた。
「いい天気だ。」
(外出るの久しぶりだなぁ。この辺は初めてだし。。)
雄大はちらりと銀行を見て、トトトッと銀行に背を向けて歩き出した。
「この辺は大きなビルばっかりだなぁ。」
銀行の並びの通りはどれも見上げるほどのビルばかりだった。
「おおっ…」
その圧倒される大きさに雄大が感嘆の声を上げると、丁度出できたスーツ姿の人に不審な顔をされてしまった。
(僕、おのぼりさんみたい。。はずい。。)
あせあせと顔を隠して、キョロキョロしていると緑の木が立っているのを見つけた。
「こんな所に木が…」
立ち止まると木は小さな広場みたいなところに立っていて、その奥にガラス張りの大きなビルが見えた。
「??」
よく見るとビルの最上部に銀色の文字が見えた。
”wz会社”
(!!?)
雄大は携帯のカバーに入れていた名刺を取り出した。
”wz会社 経理総務課
加藤 成康”
「こ、ここだ…」
名刺とビルを何度も見返し、雄大は呟いた。
「こんな立派な会社の人なんだ…」
わかってはいたけど、現実味が更に増して、加藤の存在が大きくなった。
しばらく唖然と見ていたが、ムクムクとした気持ちが湧き上がり、雄大は周りをキョロキョロした。
(ちょっとくらい…中見てもいいよね?)
好奇心と加藤を知りたい気持ちが先行して、雄大はそろそろと敷地内に入った。
今の所、表には誰もいなくて、通行人も雄大に気を留めてはいなかった。
(あっ…)
ガラス張りの向こうに受付らしい白い制服の女性の姿が見えた。
(受付の人…ミスなんたらかな?)
今度は不安感も積もり始めた。
心臓の音が速くなった。
(もうちょっとだけ…)
雄大は一歩踏み出した。
「おい!!」
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