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木曜の終わり近くにしおりをはさみました!
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木曜の終わり近く
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大きく深呼吸する。
大丈夫!僕はできる!!
もう一度、深呼吸。
よしよし!
携帯を持つ手が指が震える。
えぇい!!迷うな!!
画面に現れた番号に指を当てる。
ツーツーツー
雄大は急いで携帯を耳に当てる。
RRRRRRRRR
腕に心臓の音が伝わる。
緊張する!!
RRRRRRRRR
1回…2回…3回…
まだ仕事中かな?
だんだん緊張が解けてきた。
4回…5回…
もう西川ちゃんには連絡つかなかったて言おう!
6回…7回…
雄大は携帯を耳から離そうとした。
仕方ないよねー
8回…
『あっとと!もしもし!』
「………」
『はぁっ…はあっ….もしもし!!』
電話口から荒い息と耳障りのよい低い声が聞こえてきた。
「……」
『もしもし!雄大君!?』
雄大は自分の名前を呼ばれ、ハッとした。
「あっ…加藤さん…」
『はぁっーよかったー。間に合ったー。ゴメンね。今、ちょっとデスクから離れててさ。』
本当に安心したような加藤の声にぎゅーと胸が締め付けられる。
「すみません…お仕事中に。」
『いやいや、大した残業じゃないんだ。どうしたの?明日、お店に顔出そうと思ってたんだけだど。』
「あっ…あの…」
(明日は早く終われるんだ…)
会いたい気持ちと全く乗り気になれない複雑な気持ちが、魔女のスープのような色で混ざり合った。
『ん?』
優しい声を耳元でずっと聞きたかったが、西川のロッカーが目に入り、頭をかいた。
「あの…今大丈夫ですか?その…電話。」
『うん。大丈夫だよ。』
息が整ったのか、電話口の成康には余裕が感じられる。
「あの…その…明日!なんですけど…」
『明日がどうしたの?』
雄大はせわしなくスタッフルームをぐるぐる回り、頭をバリバリかいた。
「あの…その…こんなお願いしたら申し訳ないんですけど…」
『どんなお願い?』
今にも笑い出しそうな成康の弾んだ声に言葉が詰まる。
『雄大君?』
「あの…その…」
雄大はごくりと唾を飲んで、顔を上げた。
「あ、明日の夜とか加…成康さん、予定有りますか?」
『ん?特に何もないよ!』
期待のこもった高い声で返され、雄大は目についた椅子に腰をかけて、気を落ち着かせた。
「その…急なんですが、実は明日の夜、店のスタッフとその知り合いでカラオケに行くことになったんです。みんな(1人だけだが)知り合いを連れて行って、大勢で楽しもうって事になりまして…それでもし、成康さんの都合がつくなら、来てくれませんか?」
『……』
「で、出来たら成康さんの会社の人も連れてきてくれたら助かるんですが…」
黙りこくる成康に雄大は携帯を耳に押し当てたまま、目を閉じた。
(プライベートで2人っきりで会うことも出来てないのに、こんなお願い、最低だよな…)
嫌われたかも…雄大の頭にそんな思いがよぎった。
『いいよ。』
その明瞭な声に雄大はパッと目を開けた。
「えっ?」
『行ってもいいよ。同僚は…2人くらい連れて行けばいい?』
「あっ…はい。。」
その変わらぬ声に雄大は拍子抜けしてしまった。
『何時から?』
「あっ…すみません。僕ともう1人がラストまでなんで、多分10時過ぎとかになるかも…」
『OK!じゃあ俺たちはそれまでどっかで飯でも食っとくか…』
「あ、あの!」
トントンと話が進むのに雄大は置いてけぼりをくらったようだった。
「いいんですか?明日…ですよ。」
『ん、大丈夫。みんな夜は予定ない奴多いから。』
「本当にいいんですか?誰が来るかもわからないんですよ??」
『えっ?雄大君は来ないの??』
電話口が急に不安な声になった。
「僕は…行きますよ。」
『じゃあ全然問題ない。あっ、あぁ。』
電話の向こうの人と成康の短い相槌が聞こえた。
『ごめん、雄大君。あと場所はメールして。』
「あっ、ごめんなさい。仕事中に。。」
『ん?いいや。嬉しかった。』
柔らかい声がすぐそこにあった。
『初めて電話くれて嬉しかったのと、声が聞けて嬉しかった。ありがとう。』
「あっ…」
『あっ、じゃあまたメールして!ゆっくり話しできなくてごめんね。じゃあ。』
プッ
雄大はしばらく手にした携帯を見ていた。
「明日、僕もありがとう言わなきゃ。」
つい顔が緩んだ。
コンコンコン
「!!?」
ドアを叩かれ、雄大はビクッとして携帯を落としそうになった。
「椿さん。」
振り向くとドアノブに手をかけた、上村が立っていた。
「返品、お願いしてもいいですか?」
「あっ、うん。ごめん。今いく。」
雄大は名残惜しそうに携帯をロッカーになおした。
「俺には携帯番号、教えてくれてないですね。」
「えっ?」
雄大は顔を上げると上村は天井に顔を上げた。
「LINEのグループでは話せないこともあるんですよ。例の写真とかグループで載せれないでしょう?」
脳裏に下着姿の写メのことを思い出した。
「明日、教えて下さいね、携帯番号。」
ガシャン
残された雄大は「何でだよー」と頭をバリバリと両手でかいた。
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