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言い訳と煙草の煙にしおりをはさみました!
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言い訳と煙草の煙
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「何でって……かけ直すタイミングが見当たらなくて。。」
不快そうに顔を歪める黒田がいた。
「わかるだろう?出ても出なくても着信さえあれば、かけ直してくれたって言う安堵感があるだろう?」
雄大は喉に残る不快感を消し去ろうと唾を飲んだ。
「でも…な…加藤さん、お仕事忙しだろうし…そんな中、またかけ直してもらうもの悪いし。。」
「だったらメールでもするべきじゃないのか?」
「だって、病院とか仕事とかでメールする所がなかったし。」
「メールなら寝る前でもできるだろう?」
「そのメールの着信音で、加藤さんを起こしたら……痛っ!!」
ゴツンと頭に重たい拳で殴られた。
「”でも””だって”じゃねぇよ!小学生低学年並みの言い訳ばっかりしゃがって!」
雄大は殴られた後頭部を抑えて、うずくまった。
「だって…」
「だってじゃねぇよ!大体、お前、着信が入ってるの見たのか?」
グスリと雄大はうずくまったままでいた。
画面に表示されているのは見た。留守電に+の表示があるのも見た。メールも1、2と数字が出てるのも見た。
家でも通勤途中でも病院で電源を切る時もそれを見ていた。
でも中身は見れなかった。
(だって…見たら返さなきゃいけないだろう?)
何て返せばいい?一番聞きたいことをほっといて、何を返せばいい?
(それに…)
ふと上村の顔が浮かぶ。
(僕も裏切ってるのかもしれない…)
ふっーーー紫煙をかけられ、雄大はケホケホとむせながら、顔を上げた。
「で?今度はどんな言い訳をする?」
煙の向こうの黒田に疑問はあるものの、この人が求める答えの全てを知っているような気がした。
「何で…ここまでするんですか?加藤さんのために…人の色恋まで世話してるんですか?」
黒田は目を細めて煙草を吸った。
「そりゃ、痛々しいあいつを見るのは上司としていたたまれないし、、」
頭を抱えるような困り顔に雄大は黒田の上司の顔が見えた気がして、ドキリとした。
「あと今度のプレゼンであいつが使えないと困るんだよ。あいつの喋り方とルックスで、相手の女社長落とすつもりだから。」
が、すぐに上司の顔は見えなくなり、自分の為だけに生きるいつもの黒田に戻った。
「……そう…ですか…」
「そうだよ!契約取れないとボーナスないし。だから…」
グイッと黒田が雄大の顎を掴んだ。
「何を悩んでるのか教えろ。」
頭が真っ白になった。
「悩む…って?」
「前は加藤が好きだったのに、今は頑なに連絡を絶とうとしてる。一体、何があったんだ?」
はらりと後ろに撫でつけていた前髪が落ち、切れ長の目にかかった。
「何って…何のこと?」
目をそらす雄大の顎をグイッと黒田が掴んだ。
「確かに、人の色恋なんて俺には関係ないな。俺が狙ってる奴はここにいるし。別におしゃべりする必要もないしな。」
「えっ…?」
黒田はオドオドする雄大の顔をもう一度上げた。
「おしゃべりはここまでだ。あと、10秒!10、9、8…」
カウントしながら黒田は雄大に唇を近づけてきた。
「わあっ!わかった!!待っ!言うから!」
雄大は黒田の口元に自分の手を押し当てた。
「……」
黒田のため息が手に感じた。
黒田は雄大の手を掴み、口元から剥がした。
「早く言えよ。もう少しで警備呼ばれる所だぜ。」
黒田が喫煙ルームから外に目をやると掃除のおばさんが難しい顔でカートを引いていた。
「あっ……」
「早く言え。お前の職場なんだから面倒はごめんだろう?」
黒田は胸ポケットから煙草の箱を取り出した。
「あっ……」
(どこから話せば…)
迷っていると黒田は煙草に火をつけながら、雄大を覗き込んだ。
その瞳は真っ黒で強くて、嘘は許してくれないようだった。
「あの…実は…」
「成る程ね。たまたま加藤と元カノがまだ付き合ってるってのを聞いちゃったわけね。まぁ、あいつ目立つから、雄大君のスタッフも目に付いちゃうわなー。しかし、本人に面と向かって言うとは…変わった子だねぇ。」
「まぁ…僕を心配したんだと…」
コロコロ変わる上村を思い出し、雄大は頭をひねった。
「よおし!俺に任せとけ!!」
勢いよく立ち上がった黒田を今思えば止めればよかった…と後悔した。
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