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夏祭りにしおりをはさみました!
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夏祭り
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「お待たせしました。」
人混みの中、黒田の姿はすぐに分かった。
「おっ?あれ?」
「な、なんですか?」
黒田は上から下まで雄大を何度も行き来した。
「浴衣は?」
「だから持ってないってば。」
「女装は?」
「はっ?怒!職場から来たんですよ!」
「つまんねー格好。」
(これでも頑張ったのに…)
雄大は黒の半パン、白のTシャツに黒のベストを羽織って、買ったばかりの黒の麦わら帽子を被っていた。
「てか黒田さんこそなんなんですか?」
雄大がジロリと黒田を見た。
「何?って何?」
高そうな襟のついた白シャツに白のズボンに爪先の尖った革靴を履いた。
手元にはギラギラと輝く時計。
「何ですか?そのホストみたいな格好!」
「夜の街だからいいだろう。お前、なんだその帽子。」
「うっさい!行こう!」
テンテンテンと祭囃子の流れる波に乗るように黒田の腕を引いた。
「人多いなー」
黒田はぐるりと周囲を見渡した。
祭り独特の提灯のボンヤリとした灯り、屋台の香ばしい薫り、人々の歓声。
浴衣の女性が歩きにくそうに裾を気にすれば、横にいた男性が手を差し出す。
むっとする暑さの中に爽やかな光景だ。
そんな中、場違いなホストと学生のような雄大はよく目立った。
「暑いなー」
「そんな格好、してるからでしょう?」
「お前もそんな帽子とっちまえ!」
黒田の指が雄大の帽子に触れ、帽子は簡単に雄大の頭から落ちた。
「あっ…」
「あっ……」
ベシッベチャグシャ
帽子は難なく地面に落ち、歩く人に踏みつけられた。
「あっーー!」
雄大が拾おうとすると黒田がそれを制し、歩く人を止めた。
「あぁ…あっ…」
手元に残ったのは無残にボロボロになった麦わら帽子。
「……」
「ごめん、ごめん!」
雄大はキッと黒田を睨み、脇腹を殴った。
「ごめんじゃないよ!せっかく…変装のつもりで買ったのに!」
そう言うと黒田はブッーと吹き出した。
「何?それ変装のつもりだったの?」
「うっ……」
「そっか、そっかーゆーちゃんも考えたのねー。よしよし…」
黒田はニヤニヤして頷くとハッとした顔で通り過ぎた道をテテテテっと戻って行った。
(もう知らん!)
雄大はゴミのようになった帽子を握り締め、前へと歩いた。
人が前から後ろから地面から溢れ出たようにやってくる。
(この中に成康さんが…)
雄大はゴクリと唾を飲んだ。
「ストップ!」
雄大は肩を掴まれ、つんのめりそうになった。
「わっ!」
急に後ろから頭を鷲掴みにされ、バチンと耳に衝撃と痛みが走った。
「イッ!?」
顔を硬い物が覆い、丸い穴から外が見えた。
「??」
「見える?」
丸い穴から黒田の覗き込む顔が見えた。
「コレ…」
顔が圧迫されて、呼吸も浅くなる。
「これで変装になるでしょう?」
「ふ、、ふ、、」
黒田のニコリ顔に雄大は被せられたお面を剥ぎ取った。
「ふざけないでくださいよ!変装ってか、変人じゃないですか!?何ですか!?….ん?!」
そのお面は某ライダーモノだった。
黒田は腕を伸ばし、ぐるりと回した。
「変身!!」
雄大の気持ち
↓↓↓↓
(♯`∧´)(♯`∧´)(♯`∧´)(♯`∧´)
「ほら、雄大、りんご飴買ってあげよう。」
お面を頭につけ、かき氷をふてぶてしい顔で食べる雄大の頭を撫でながら、黒田はりんご飴を指差した。
「僕、あっちで射的やってる。」
「おうおう、じゃあ買って持って行ってやるよ。」
雄大はふてぶてしいまま、ドスドスと歩いた。
後ろで「さっきの子は弟さん?可愛いね。お幾つなの?」という会話が聞こえたる。黒田と屋台による度にそう言われ、お面を付けた自分がいかに幼く見られるか、腹立たしいが、万が一の為のお面は取れなかった。
パンパンパン
「あー残念。惜しかったねーぼく。」
狙ったフィギュアの箱はピクリともしなかった。
「もう1回する。」
「じゃあ、おまけで10弾出してあげるよ。」
ギュギュと弾を押し込む雄大の横を見たことある人若い女性を追いかけて、通り過ぎた。
「こんなトコいないで、涼しいとこでビールでも飲まない?」
雄大はその白い高そうなシャツの背中に射的の銃を向け、「バンッ」と小さく呟いた。
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