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初めての焼きそばにしおりをはさみました!
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初めての焼きそば
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「いらっしゃいませー。」
11時。
暑さも若干客足も増えてきた。
隣のテントの女性が無表情に「炒めて、ソースをかけるだけ」と言われて作ってはみたが……
「麺が解れないし……」
「あっー、椿さん。なんかイマイチ味にパンチが無いですねーー。」
サーキュレーターの前で風を全て受け止めている牟田が、アルミ箔の上に乗せた麺をわしわしとすするというか飲んでいた。
「んな事いっても….」
隣のテントはたこ焼きのようで、じゅうじゅうと熱い音が聞こえて来た。
雄大ははぁっーとため息をついて、まだパックに詰めれないできない焼きそばをかき回した。
「牟田さん、全部が全部、試食じゃないからね。」
「とは言ってもこの味は”売りもの”にはなりませんよ。」
振り返るとそこには牟田の姿は無く、焼きそばと割り箸を持っている上村が立っていた。
「う、う、上村…くん!?」
「豚肉、本部の人からもらってきました。」
上村はするっと雄大の横に立った。
「塩胡椒しました?」
「はぁっ?」
「やっぱり。牟田さんには塩胡椒買ってきてもらうようにお願いしましたから。ソースだけじゃあ、味はひき立ちませんよ。」
フフンッと上から目線で言われ、雄大はたじろいだ。
「ぐっ……だって…僕料理なんか!」
「あっ、でもこれって、椿さんの手作り料理ってことですよね?」
目を輝かせた上村から、焼きそばを取り上げてようとして飛び上がった。
「俺、自炊してますよ。」
「ぐっ…」
雄大は悔しげに伸ばしていた手を下ろした。
「いらっしゃいませー。」
上村がホットプレートを上げるともわっとした湯気が上がり、ソースをかけて混ぜるとソースのいい香りがはなをくすぐる。
「椿さん、キャベツ切ってます?」
「えっ?」
つい手が止まっていた。
ひょっとりと上村が雄大の手元を覗き込んだ。
「切ってる…けど?」
「そんな大きく切って、ウサギにでもあげるんですか?」
「うっうっ…じゃ、じゃあどれくらいに切ればいいんだよ!」
「この位です。」
上村自身が切ったキャベツを見せられる。
「お、オッケー!」
何ヶ月ぶりの包丁に力が入る。
「だから…」
不意に後ろから手が伸びて来て、雄大の手に重ねられた。
「!!?」
「その持ち方は危ないですよ。身を削る気ですか?」
ギュッと手が包み込まれる。
「離れ….」
「本当に料理しないんですね。ヤバいっすよ。今どき包丁も握れないって。」
後ろから体温を感じて、更に熱くなる。
(何なんだよ??)
急にグイッと顎を持ち上げられ、後ろに引っ張られた。
「まっ、俺が飼ってあげてもイイですよ。」
すぐそこに上村の楽しそうな顔があった。
「なっ…」
耳まで赤くなりそうになる。
雄大はフリーになった片腕を思いっきり、後ろへと引いた。
「うぐっ!!」
腕は上村の片腹にヒットしたようで、ようやく暑い体温が離れた。
「暑いんだよ!!そういうのはやめろよ!」
雄大はブスッとしてキャベツに再び向き合おうとすると、目の前の若い女の子達が、興奮気味に携帯をこちらに向けていた。
「い、いらっしゃいませ…」
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