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黒田さんの男気にしおりをはさみました!
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黒田さんの男気
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「不味いな…あれは専務だ。」
黒田の深刻な声が頭に降ってくる。
胸がキューーと痛んで、酸素が薄く感じる。
(成康さんは…ここに来ていない?)
複雑な気持ちが次々と混ざる。
心配と不安、不思議とそして小さな安堵。
「なんだとーー!!」
大きな声が館内中に響いた。
雄大はそっと黒田の腕から顔を出した。
ロビーでは喚き立てる顔の大きな男性とペコペコと頭を下げる専務と呼ばれる人だった。
「やべぇな……」
見上げると黒田は壁をコツコツ指で叩かながら、苦々しく眉をひそめていた。
「成康さんは…どこに行ったんでしょう…?」
ついぽろりと言葉に出すと急に両目からポロポロと涙が落ちてしまった。
それが黒田の手に一粒落ち、黒田は壁を叩いていた動作を止めた。
「仕方ない…が、他に思いつかないからな…」
黒田は雄大を離し、ゴソゴソと上着のポケットを探った。
「あっ…これだけしかないか…」
雄大は不安げな顔でブツブツ言っている黒田に向き直った。
黒田の後ろでは修羅場のような光景が見え、周りの人も遠巻きに通り過ぎていた。
「これ。」
ハッとして雄大が顔を戻すと目の前に一万円札が差し出された。
「??」
「ほら、これを持って。」
黒田は雄大の手に無理矢理その一万円札を握らせた。
「これで加藤を探してくれ。」
「えっ?」
黒田の深い黒い瞳がじっと雄大を見つめる。
「あいつはバカだから、急に考えを変えて、どっかをフラフラしてるんだと思う。でもまた急に思い詰めて、とんでも無いことしたら大変だろう?」
「とんでも無い事…?」
妙な考えにザワザワと胸が泡立つ。
「違う違う!!」
黒田は固まった雄大の顔に両手で包み、指で雄大の涙を強く拭った。
「とにかく!あいつを探してこい!」
黒田はそう言って、雄大から手を離し、無理矢理のようににっこり笑った。
「く、黒田さんは?」
「俺は…代わりにあっちに行ってくる。」
黒田は親指を立てぐいっと後ろを指した。
「えっ…どうやって…」
「俺が代わりに見合いしてくるよ。」
「はっ!?」
雄大は黒田に飛びつくように近づいた。
「大丈夫だって。俺はバツがついてるだけで、独身だし。」
黒田は雄大を押しもどすように肩に手をかけた。
「で…でも。。」
「加藤なら無理かもしれないが、俺ならこれくらいの見合い、なんとか切り抜けれる。俺、まだ結婚しする気ないし、こんなちゃらんぽらんなら向こうからお断りされるわ!だから、行ってこい!」
黒田は雄大を隅から引き出し、ドンっと出入り口へと身体を押した。
雄大は押されるがまま、出入り口へと身体を向けた時、バシッと腕を掴まれた。
「えっ?」
引き戻されるまま顔を向けると黒田の顔が近付き、雄大は目を開けたまま、柔らかい感触を唇で受け止めた。
「んっ…」
ほんの5秒足らずの口づけは不思議と嫌ではなかった。
唇を離した時、黒田は名残惜しそうに雄大の手を掴んでいた。
「…何で加藤にこんなにしてやるのかっての一つ、言い忘れてた。」
「…?」
「俺も…あいつが好きだった。」
「えっ…」
優しい顔がこちらを見ていた。
「行けよ。」
雄大は離された手を胸に抱込んだ。
「絶対…探してみせます。」
「あぁ…頼んだぞ。」
雄大は上着を翻し、キュッとスニーカーを鳴らした。
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