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銀世界を望むにしおりをはさみました!
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銀世界を望む
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医者×高校生
(発作(呼吸器)、発熱)
がらりと開けた病室に君がいない
どこだろうかと探せば
クリスマスの飾りが施された中庭を囲う硝子の前に君がいた
点滴台を片手に
水色の病院着に白色のカーディガンを羽織って
色とりどりに配色された電灯を眺めて
傍に椅子もあるのに立ち尽くす君
一体いつからそこに居たのか
「此処に居たのか。」
そう君に声をかければ
ゆっくりと俺の方を向く
「綺麗だから…」
形の整ったピンクの唇がそう告げる
「まぁ、綺麗だ、な…」
隣に立って一緒に飾りを見れば
君の肩を抱き寄せる
突然、抱き寄せたために
少しバランスを崩して傾いた君が
倒れないように腕を掴めば
冷えきっていて腕から指先までひんやりとしていた
長いこと此処にいたことを物語っていて
このまま長くいさせる訳にはいかなかった
「身体に障る、ぞ。」
掴んだ手を暖めるように撫でてそう告げる
「大丈夫、だから。」
君は手を撫でる俺の手を拒むとそう告げる
俺とは目を合わせずにそっぽを向いて
陶器のような白い頬が桃色に染まってる
「大丈夫じゃないだろ。顔も赤くなってるし。」
額に触れようとして
今度は触れる前に拒絶される
「気のせいだから。」
ぱしりと音を立てて君に拒絶された手
いつから君はこんな子になったんだっけ??
前まではこんなに拒絶する子じゃなかった
「ごめん、て。あんまり、怒るとまた発作起こすぞ。」
もう触れまいと君を見ながら言う
発作を起こすも何も
発作の前兆は見られている
吐く呼吸にひゅーひゅーという笛のような音が混じって聴こえ
肩が軽く上下している
君はそんな息遣いに慣れてしまっていて
「平気」なんて言うんだろうし
気付いていないんだろうけど
それが通常になってもらったら困るんだよ、な
「なぁ、部屋に……」
「戻らない。」
何を頑なに君は拒んでいるのか
何で此処に居続けるのだろうか
「倒れても知らねーからな。」
はぁと溜息を吐いて近くの椅子に座り込む
君は少し頑固なトコがあるから
簡単なことで動かないのも分かっている
限界な時に強引に戻すのも手か
「ねぇ、先生??」
しばらくして君が口を開く
不調の申し出だろうか
でも、君は滅多に不調を告げることなどない
「ん??」
「今日、雪、降る??」
外を眺めて上をちらちらと眺めているなと思えばそんなことか
白衣のポケットに入れていたスマホを取り出して天気予報を確認すれば
雪のマークなんてない
曇りや雨マークが並んでいて
雪になるほど寒くなるなんて情報もない
「天気予報では、降らない、な。」
「なんだ…残念……」
そう言うと君は目を伏せ
硝子から離れ、点滴台を押した
やっと病室に戻ってくれる
ほっとした矢先
何歩か歩いたところで君は蹲る
近寄って覗き込めば
君の顔は真っ青で額にはじわりと汗が滲み出ている
急いで脈と呼吸を確認しながら
ピッチで連絡を入れる
脈は速く時々飛んでいる
ひゅーひゅーだけでおさまっていた呼吸に
ぜぃ、ぜぃと耳障りな呼吸音が混じる
呼吸数も明らかにおかしい
名前を呼んでも酸素を求めるのに必死で応えがない
コレは完全に発作を起こさせてしまったな、と
少しの後悔
すぐにスタッフが駆け付けてきて
君を病室に運ぶと処置が行われる
やっと症状が落ち着くと君は眠りについた
こんな状態になるまで
君はどうして雪を願ったのか
夜中に目を覚ました君がじっと外を眺めている
熱が出てしまって怠いのだろう
身体を起こして外を眺めるのが好きなのに
身体を横たえたまま
「そんなに、雪、見たかったのか??」
ベッドの淵に座って君に問いかける
君は俺の方を向くこともせずに窓だけを見つめてる
「ホワイトクリスマスって、ロマンチックなんでしょう??」
「え??」
君からそんな台詞がでるなんて思ってなくて
突然の台詞に驚く
確かにロマンチックだろう
でも、君がそれを望むなんて
「先生とホワイトクリスマスを過ごしてみたいんだ…きっと、綺麗、だよ、ね……」
君の肩が震える、声が震える
発作がぶり返したか、と焦るが
違う
君は目に涙を溜めていた
「先生……俺……ホワイトクリスマス、経験することできるのかなぁ??」
あぁ、何なの君は
どうしてこんな時だけ素直なの
震える君を抱く
「大丈夫、いつか、経験できるよ。」
「本当に??」
「あぁ、本当だよ。」
小さな嘘
君の身体はいつまでもつとも分からない
ただ長くないということだけは確か
年に一回の行事の時に
都合よく雪が降るなんて確信持てない
「先生、俺、ね……プレゼントはホワイトクリスマスがいいや……」
健気に言う君
そのプレゼントが届けばいいななんて考えながら抱き締めた君を撫でる
君は安心したのかまた目を瞑って眠りにつく
プレゼント…か……
クリスマスにもらえるプレゼントが
子供だけの特権でないのならば
俺も欲しい
君の健康な身体、が
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