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夢から覚めるように。にしおりをはさみました!
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夢から覚めるように。
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振り返ると、道の反対側にスーツ姿の女性が二人。「あ、葉月だ」とアキくんが言った。
……葉月、って確か。
アキくんの彼女の、名前、だ。
二人はこちらに段々と近づいてくる。近づいてくるにつれ、俺は自分の胸がざわざわするのがわかった。背の高い女性と背の低い女性。どっちが葉月さんだろう……。
あと二メートルくらいになったとき、「葉月」とアキくんが呼んだ。それに応えて、背の低い方の女性がにこっと笑う。あ、こっちが葉月さんだ。
俺はじっくりとその人を観察した。部活の先輩……アキくんの同級生が言ってた通りだ。可愛らしい人。それも、着飾って可愛い感じになってるんじゃなくて、素のままで可愛いって感じ。
葉月さんは俺とアキくんの前にやって来ると、俺をちらりと見て「そっちの人は?」と訊いた。アキくんが答える。
「今井光輔。俺の五歳からの幼馴染み」
「あっやっぱりかぁ。そうだと思ったんだ。はじめまして、光輔くん」
鈴の鳴るような女の子らしい声で葉月さんは俺に優しく笑いかけながら言った。
ーーわたし、秋良くんの彼女で佐藤葉月って言います
それを聞いたときの、俺の気持ちを何と言ったらいいんだろう。
嫉妬?羨望?悲しみ?怒り?
よく、わからない。わからないけれど、俺は急に気持ち悪くなって、吐き気がしてきた。
それでも、口は自動的に動いてしまう。
「はじめまして、俺、今井光輔って言います……あはは、生きてるうちにアキくんの彼女に会えるとはなあ」
「どーゆー意味だよ、こーすけ。おい、もう一回言ってみろ」
俺たちのやり取りを見て、葉月さんと連れの女性が笑っている。何が面白いんだろ……わかんねー。俺が上手く“アキくんの幼馴染み”をやれているかもわからない。頬が引きつっているのは気のせいかな。気のせいじゃないのかな。わからない。
その後、連れの女性の名前も紹介されたけど、それすら覚えられなかった。
アキくんの彼女との出会いは、終始、笑顔の形に顔を引きつらせて終わった。
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