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綾倉氏にしおりをはさみました!
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綾倉氏
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綾倉氏は、オフィスで藤原が今日の予定を読み上げるのを聞いていた。
「午前中はK社の山城氏とT計画のことで打ち合わせが入っています。
昼食を取りながら、S社の新川氏から投資状況に関する報告を受け、
午後2時にはフレッチャー社を訪問・・・」
フレッチャー社は、切手とコインを扱う小さな会社である。
それが、綾倉グループに所属しているのは、
先代の綾倉氏の親友であった故デビッド・フレッチャー氏が設立したことに起因する。
会社の経営状況は、グループの重役会議で毎回取り上げられるほど、ひどい状況だった。
今回、綾倉氏自ら訪問する目的は、同社の状態を現場で確認し、このまま存続させるか、
同業他社に身売りさせるか決定するためである。
フレッチャー社の社長室は、こじんまりと整頓されていた。
埃一つ見当たらないし、事務机には今朝かえたばかりと思われる花が飾られていた。
社長の木村は、綾倉氏が来ることでひどく緊張していた。
もちろん、彼の訪問の意味を十分理解している。
綾倉氏が椅子に座った途端、何も言わないうちから、
あらかじめ準備していたたくさんの資料をテーブルの上に広げた。
綾倉氏はそれらを眺めながら何点か質問し、木村が答えられないと、遠慮なく顔をしかめた。
同席した藤原には、綾倉氏が相手の困った様子を楽しんでいるのがわかったが、
木村の額には汗がにじんでいた。
今にも泣きそうな顔をして、綾倉氏へ必死に援助を求める木村を、綾倉氏は手で制止した。
「とりあえず、いくつか資料を持ち帰って検討してみることにしよう」
綾倉氏は資料の中から、いくつか取り出すと木村に渡した。
「おい、誰か。これをコピーしてくれ」
木村は部屋の外に顔を出すと、大声を張り上げた。
彼はコピーが来るまで、落ち着かなげに「お願いします」を繰り返した。
藤原はコピーを受け取ると、それをバッグにしまった。
その時、彼は隣の綾倉氏があらぬ方向を見ているのに気が付いた。
視線の先を追ってみると、ちょうど、コピーを持ってきた青年が出て行ったところだった。
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