アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
タバコにしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
タバコ
-
彼には、愛する妻と娘がいて。
「ヒスイ、気持ちいい??」
俺には、彼しかいなくて。
「あっ...あ、きもちぃ...んっ」
体だけでも愛してくれる彼が大好きで。
「あ、タカさ、んっ...」
ホントの名前すら教えてくれない彼に、源氏名だと装って本名を教えたのはきっと、ただ誰かに名前を呼んで欲しかったからだけじゃない。
誰にも言えないこの想いは自分の中に閉じ込めておくしかなくて。
苦しくて苦しくてしょうがなかったけれど、誰かが自分を認識してくれる気持ちよさを自分から手放すことはできなかった。
抱かれるのはいつもホテルで。
ラブホみたいな安っぽい部屋じゃなくて、僕なんかが値段を知ることも許されないくらいに高いホテルのスイートルーム。
彼を知ることのできない僕には、どうして彼がこんなに高いホテルを毎月のように取れるのかはわからなかったけれど。
「じゃあね、ヒスイ。」
いつも通り寝た振りをする僕の体を清めて、彼は帰っていった。
いつも通り、一度吸っただけのタバコを残して。
まだ煙がくすぶるそれを手にとって唇に挟んだ。
「...。」
自然と涙がこぼれ落ちた。
間接キスでもなければ、彼とキスすることはできない。
俺ができなかった。
俺とキスした唇で、彼は奥さんとキスをして。
子どもにもキスをするかもしれない。
そんな綺麗な唇に、汚れた俺なんかが触れて良いわけがないんだ。
だから、きっとこれを残していく彼は酷な人だ。
「タカ、さん...。」
それでも俺は、彼への愛をとめることはできないから。
「タカさん、俺を、___________」
泣きながらそっと、紫煙を吸い込んだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
2 / 2