アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
男娼とヤクザ/シーズン2(第8話)にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
男娼とヤクザ/シーズン2(第8話)
-
「大和……………お帰り」
それは、実際よりもとても久し振りに感じる声。
山代に見送られ、朝帰りとなった大和へかけられた、とびきりの優しさ。
「………………高橋さん」
ビルの非常階段を上がろうとした時、偶々買い物から帰って来た高橋と出会す。
「ちょっと、今夜の買い出しに行ってたんや。チーズとか、美味いのは自分で選びたいしな。お腹空いてへん?バゲットとかも買うたから、摘まむか?」
大きな紙袋を持ち上げ、綺麗な笑顔を見せる高橋に、ホッと息をつく。
何だろう。
高橋には、いつもどこか家族のような温かさを見てしまう。
「ええんですか?店に出すのに…………」
「ええもなにも、疲れた顔しとるで」
「…………………ああ」
色々あったから。
嵩原に会って、山代に会って……………頭の中がこんがらがる。
嵩原への想いと、高橋や山代への想い。
其々想いの意味は違うけど、自分にとって大切な存在である事には違いない。
一気に色んなものが押し寄せて、何から話をつけたら良いかわからなくなった。
「…………………大丈夫か?」
ポンと肩を叩き、微笑む高橋に、大和は小さく頷いた。
「高橋さん、すみません。俺、まだ気持ちが………」
「クス……………わかったとるよ、そんなん。俺も嵩原に会って、気がせってしもうた……………堪忍な、一番に大事にせなあかんのは、お前の気持ちやのに」
なんて、大人だろう。
多分、こんな人に愛されたら幸せになるんだ。
大和は、自分を気遣う高橋を見つめ、はにかむように笑った。
「あ…………ありがとうございます。ホンマ、すみません……………」
「俺の事は気にせんでええ。かと言って、嵩原を選ぶんは反対やけど………………気持ちに無理して、しんどい想いだけはさせとうない」
山代の優しさとは、また違う柔らかな空気。
どの人も、自分を大切に想ってくれてるのが伝わるから悩む。
………………悩む?
嵩原と会うまでは、自分はもっと冷めた奴だった気がする。
誰かの為に悩むなんて、あったかな。
調子が狂うわ…………………。
怒ったり、哀しんだり、愛しかったり。
嵩原のせいで、今まで捨ててきた感情が、自分の中で芽生えてしまった。
「ほら、帰って朝飯にしようか」
「はい………………」
責任取れよ、どアホ。
キィ……………………
「すみません、もう閉店……………」
深夜のbar、anniversary。
店員達を帰らせて、店のシャッターを下ろそうとしていた高橋は、静かに開いたドアへ目を止める。
「……………よお、今夜もえらい繁盛したみたいやな」
「上地………………」
高橋の視線を塞ぐ、厳つい出で立ち。
渋い声も、その男にピッタリの名のあるヤクザ。
嵩原と同じ組の幹部、上地だ。
「客が引くの待っとったら、随分かかったわ」
「別に、待つ必要ないやろ……………入って来たら良かったのに」
「こないなヤクザが彷徨いたら、店の評判落ちるで。これでも一応、嵩原と負けん名は持っとるさかいな……………」
「ぷ………………自分で言うな」
高橋と、上地。
意外な繋がりのようで、実は古い付き合い。
二人は、昔から共に育った幼なじみ。
上地の方が歳上で、どちらかと言うと高橋を可愛がって来た方だが、それだけではない。
「にしても、相変わらず色気は絶えんな……………ガキなんか諦めて、またヨリ戻さへんか?」
「んっ………………こら、上地………っ」
伸びてくる腕に、高橋の身体は引っ張られる。
「お前を最も愛せんのは、俺だけやぞ」
「もっ、それでも大和がええんや……………俺は」
「…………………往生際悪いな」
「あ……………ん………ほっとけ」
後ろから高橋を抱きしめ、首筋へキスをする上地の愛撫。
シャツ越しに撫でる手つきが、もうその身体を逃がさまいといやらしく弱い部分を刺激する。
二人の本当の関係。
数年前まで、愛し合った元恋人。
そして、高橋はいまだに上地の寵愛を受けている。
「どいつもこいつも、あのガキの何処がええか………俺にはさっぱりやな」
「大和と関わらんお前には、わからんわ……………何や、危なっかしゅうて、でも可愛ゆうて……………放っておけんねん」
関わったらわかる、見放せない少年。
一人で必死に生きようともがくいたいけな姿に、心は揺さぶられる。
何故か、放っておけない。
気になってしまう、大和の魅力。
上地の腕に抱かれ、大和を語る高橋の瞳は、母性さえ漂う優美な様。
見せつけられた上地は、大きく溜め息を漏らすしかない。
「そないなもんかの……………嵩原も、似たような事言うてたわ」
「え…………………」
「組員らも気にしとったから、ちと話聞いて来たんや……………ま、お前もあのガキに、随分入れ込んどるようやったしな」
高橋の所へちょくちょく来ていた上地も、大和の事は知っていた。
愛想のない、冷たい目。
興味は無かった。
スレたガキなんて、この街にはゴロゴロいる。
「嵩原の奴、かなり本気でガキの事考えとったで。あいつはあいつなりに、ガキの将来を大事に想うとった……………お前には悪いが、嵩原言うヤクザは裏じゃホンマに人気のあるモテ男や。ガキが嵩原と関わったんなら、互いに堕ちんのは時間の問題やろな」
「上地………………っ」
切磋琢磨してきたからこそ知る、嵩原の良さ。
「俺が、お前以外を見る事はねぇけど…………お前に会うてなかったら、嵩原に惚れとるわ。お前かて、ホンマは認めとんやろ?男としての、嵩原を………」
男としての、嵩原。
恐れられているが、嫌われてはいない。
barをしていれば、裏の話もよく耳にする。
嵩原の評判は、すこぶる良いものだった。
どうして………………。
高橋は上地の話に視線を落とし、身を包む腕を握りしめた。
「せやけど、あいつは………………」
あいつは、親の仇。
憎んでも、憎みきれない苦しい思い出。
それをずっと聞いて来た上地にも、高橋の苦しみは理解していた。
自分は、高橋の親を潰した組にいる。
昔の馴染みではなかったら、本来はこうして会ってもくれなかっただろう。
「高橋……………その話な、真相は違うねん」
「は…………………」
「嵩原が要らん事抜かすな言うから、周りは黙っとるだけや…………」
無駄口を叩かない。
嵩原の通した筋が、高橋の目を曇らせた。
「あいつは、お前の親父を殺ってへん」
(あくまでパラレルなので、カップルご了承下さい。すみません)
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
162 / 241