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男娼とヤクザ/シリーズ4(第28話/完結)にしおりをはさみました!
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男娼とヤクザ/シリーズ4(第28話/完結)
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自覚のない美人は、本当に罪な美人。
『俺は、ずっとお前が好きなんや』
その告白に、山代は初めて錦戸の想いに気付く。
大学時代から、皆の憧れ。
頭が良くて、ムードメーカー。
影に隠れるように、いつも周りから一歩引いて歩いていた自分とは、正反対。
何故、自分が会社設立に誘われたのか、いまだに謎だった。
「に………錦戸?」
「今更、ビックリするか…………めちゃくちゃアピってたで、俺」
「あ…………ご、ごめ………」
「その顔で謝んな。食ってしまいとうなる」
「な…………」
カァァと赤くなる山代の可愛いこと。
戸惑う手にゆっくりと自分の手を重ね、錦戸はたまらない愛しさに思わず苦笑い。
悪気はないんだ。
これが、自分が見て来た山代。
いつも真面目過ぎるほど真面目で、思い詰めたら一直線。
大和の事を知った時も、錦戸なりに心配はしたが、何かあれば守ってやらなければと思う自分がいた。
実際、暴走は過ぎた。
大和や嵩原を苦しめた事は、寛容には済まされない所まで来てしまった。
申し訳ない事をした。
自分が、もっと早く止めてやらなければいけなかった。
「ぷ……ウブかよ。変わらへんなぁ、お前は。でも、そんなお前も含めて、そのまんまのお前がええ………時に無茶する事もあるけど、それも全部俺が抱えてやればええだけの事やしな……いや、抱えたいんや、俺が」
「錦戸…………」
だからこそ、思う。
もう、見守るだけは止めようと。
山代の全てを理解して、付き合ってやれるのは自分しかいないと胸を張ろう。
「冗談言っとんやねぇぞ……………大学の時から、俺はお前が好きやった。お前と離れとうのうて、仕事にも引っ張ったんやから」
「だ、だけど…………お前は、ノンケじゃ……」
「ノンケが、男に恋したらあかんのか?確かに女は好きやけど、惚れたんはお前や」
見つめ合う瞳から、溢れる愛情。
錦戸の真剣で優しい眼差しに、山代は赤い顔を益々赤くして唇を震わせた。
「お………俺で、いいのか…………」
「ここまで来て、それ言う?」
「いや…………」
「なら、聞くな」
互いの息が肌に触れる程の距離。
そこから、重なっていた手をグッと握りしめ、錦戸は照れる山代へ身体を寄せていく。
「錦……………」
「好きや……………好きや、山代。これからは、プライベートも俺のパートナーでおってくれ」
停めた車の中で、囁く愛の言葉。
「皆………見てる………」
「見させとけ…………男同士が恋したって、何も恥ずかしゅうねぇ。自信持って、顔を上げようで」
「……………ん」
歩道を歩く通行人達が、チラチラとこちらを見ながら過ぎて行く最中、錦戸の前向きな姿が山代の心に光を灯す。
何も恥ずかしゅうねぇ。
周りと違う事が、長い間自分を俯かせる原因だった。
恥ずかしゅうねぇ………。
何故、気付かなかったのか。
こんな近くに、本当の自分を見てくれている人がいる事に。
「俺も………お前がいい………」
「……………ああ」
見上げた世界は、眩しい程に太陽が降り注ぐ。
春の日差しを浴び、高級車に映る二つの影が自然と一つになる。
恥ずかしくはない。
互いを認め合った二人のキスシーンは、誰の目にも美しく見えた。
「恋って、なんかやっぱりええな………」
「あ…………?」
少しだけ遠回りとなった、買い出し。
長い道のりを、時々嵩原と肩を触れながら歩く大和は、今日見たシュウ達を思い出し、嬉しそうに笑顔を浮かべる。
誰かが、誰かを好きになる。
時に苦しく、時に人を傷付け、紆余曲折しつつも歩んだ恋の道。
隣に嵩原がいる幸せを噛みしめ、大和は前を向く。
「怖いくらい、幸せや…………嵩原、ホンマにありがとう」
「アホ………それを言うなら、俺の方や。お前がおらんかったら、今の俺はいねぇ…………こんな風に、外の風が気持ちええ事も気付かへんかった。隣にお前がおるからや」
「嵩原……………」
極道の世界では、恐れられていた男。
いつも無表情で愛想がない。
笑顔なんて見せたら、足元を掬われるとしか考えていなかった。
それが、恋をした。
よりにもよって、10歳以上も離れた娼夫の少年に。
「もう………お前を失ったら、生きて行かれへんな」
しかも、とことん堕ちる所まで堕ちてしまう程。
今は、大和とこうして過ごす何気ない時間が、楽しくて仕方がない。
呆れる位、惚れている。
「へ…………」
「へ…………て、当然やろ。お前に惚れとんやから」
「も、も一回言うて………」
「なんでな…………二度も言うか」
「ぶぅぅ………っ」
「赤子か、お前は」
買い物袋を振り回し、腕にすがりつく大和の可愛い姿。
守ってやりたい。
この愛しい子を。
嵩原は大和を見下ろし、クスリと笑みを溢す。
「早よ、帰るぞ…………今夜は、美味い飯食わしてくれるんやろ?」
「え………わ………っんん」
そして、自分へ絡まる身体へ手を伸ばすと、思い切りそれを抱き寄せた。
熱くなった頬が、首筋に触れる。
顔を埋めた大和が今どんな顔をしているか、見なくても十分に伝わった。
「…………愛しとる、大和。どんな恋にも負けへん恋をしていこう…………」
「嵩…………」
娼夫とヤクザが愛し合う。
救いようのないカップルだが、とても幸せだと思う。
「この先、楽な事ばかりじゃねぇ…………むしろ、厳しさばかりがあるやもしれん。せやけど、何があっても、お前だけは大切にする」
嵩原の胸へ身を沈め、大和は愛される悦びに瞳を潤ませた。
理解されなくていい。
幸せなんて、人それぞれ。
「うん、わかっとる…………嵩原の気持ちは、ちゃんとわかっとるから」
「大和…………」
「何処までも付いて行く…………俺のこれからは、ずっと嵩原と共に」
辛かった幼少期。
それから逃げ出した少年は、ようやく幸せを手にする。
生涯に、何度もない大恋愛。
嵩原と共に。
二人が離れる事は、二度とないだろう。
「て言うか、ひき肉買うの忘れた………」
「……………はあ?」
二度と、ない…………ハズ。
〈完〉
(皆様、ちょっと長くなってしまいました男娼シリーズ、お付き合い下さりありがとうございました(*_ _)
いつもと違うキャラ設定、最初はもっと早く終わらせるつもりが、思いの外入り込んでしまいました。本編にはない沢山のカップルが書けて、それは書いていて楽しかったです。本当にありがとうございます。そして、この後は何も考えていなくて……しばらく休もうかとも思っています。リクエストなどあれば、また書かせてもらいますし、実はハロウィンの話も考えてましたが書けないままで(汗)何かイベントがあれば書くかもしれません……すみません、本当に未定です。
ただ、本編は変わらず1日おきの更新にさせて下さい。前に話したイラストへも入ろうかと考えてもいます。男娼がまた書きたくなる可能性も無きにしもあらず……でも、何かを終えるのは寂しいですね(泣)とにかく、ここまでやれたのは皆様のお陰です。本当に本当にありがとうございました!!)
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