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海へ出た初夏の旅2にしおりをはさみました!
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海へ出た初夏の旅2
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(葵語り)
「せんせー、海だよー、海、うみーー」
車が海岸線をカーブすると、開けっ放しの窓から一気に潮風が入ってきた。湿った空気に気持ちが高揚する。昼過ぎの太陽が海面に写り、直視できないくらい眩しかった。海だぁ。
「葵は本当に海が好きだな。風が強いから、窓閉めろよ。やば、煽られる。」
「もうちょっとだけ……もう一回聞くけど、海は後からなんだよね。」
「用事を済ませてから最後に行くって言っただろ。先に実家へ行くぞ。俺は後回しが嫌なの。」
「はーい。分かりましたぁ。」
姿勢を正しく座り直し、窓を閉めた。後部座席には春子さんへのお土産が置いてある。とは言っても俺が食べたかったものを選んだだけだ。新しいバイト先の近くにあるチーズケーキ専門店は、最近見つけたお気に入りである。
新しいバイト先『凛堂(りんどう)』へ行き始めたのはついこの間からだ。新井さんもいい人そうだし、好きなものに囲まれてるのは居心地が良いのだが、色々とあったりする。この話はまた別の機会にゆっくり話そうと思う。
30分走って、見たことがある街並みが視界に入ってきた。先生の家は付き合ったばかりの頃に1度行ったことがあるきりだ。春子さんには退院してから行きますと約束したが、バイトや名ばかりの就活で忙しく、時間が取れなかった。でも、春子さんとはしょっちゅうラインしてるので、今回のことも急だけど伝えてあった。会うのが楽しみだ。
「…………ただいまー……おお、ハナじゃないか。ただいま。」
玄関を開けると、うにゃーと待ち構えていたハナちゃんが先生に擦り寄ってきた。白と黒の斑模様は、前より丸いシルエットになっている。先生に思いっきり甘えていた。
「うわ、ハナちゃん。こんにちは。」
挨拶をすると俺を冷たく一瞥して、ハナちゃんはスルリと奥へ消えて行く。なんだか反応が悪くないか。
「ハナに嫌われたな。あいつは母さん以外の同性が嫌いなんだ。つまり、葵は女と認識されたんだろう。葵はオンナノコだ。」
「うそ。前会った時は普通に寄ってきてくれたよ。抱っこもさせてくれた。」
「あれから随分経っているじゃないか。残念だなー。まぁ、気にすんな。」
「えええっ、後でリベンジするからいいよ。俺は男だ。ハナちゃん、ハナちゃんは?」
かなりのショックを受けながら、靴を脱ぐ。先生の実家はリフォームしたばかりで、内装が新築のように綺麗だった。
そのまま先生の後をついて歩いて、突き当たりのキッチンに入ると、春子さんが居た。
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