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そうだ京都へ行こう6にしおりをはさみました!
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そうだ京都へ行こう6
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(葵語り)
「あの……ちょっとここに寄ってもいいですか?」
昼食を食べようと通りを歩いていた時に、ふと入った路地の雑貨屋が気になり、足を止めた。ガラス張りの店内の入り口には大きな多肉植物が飾られている。
さっきから人目もあるのに肩を抱かれて、恥ずかしかったのもある。松山さんの腕を抜けて、女の子が好きそうな雑貨屋に勢いで入った。
すぐ目に留まったのは、シロクマのマグカップだ。こちらを向いている様が垂れ目で先生に似ている。名字も熊谷だし。
隣には申し合わせたように青い小花柄のカップもある。葵の花ではないけど、ちょうどいい。お土産に2つとも購入した。
これで毎朝コーヒーを飲もうっと。俺のは激甘だから邪道過ぎてコーヒーとは呼ばないといつも言われる。先生と同じ物を飲みたいけど、苦いのが苦手だから必然的に甘くなる。
店を出ると、外で待っていた松山さんが誰かと話をしていた。この横顔は見たことがある……けど、なんでだ??
「野田さんっ、なんでここに居るの?」
思わず指差しながら大声を出していた。
久しぶりに姿を見る野田さんは全然変わっていない。相変わらず彼女募集中の面倒見がよくてちょっとイタイお兄さんだ。
「あっ、いたいた。葵君。俺も出張で来たの。だけど1人で寂しいから祐樹も連れて来たんだけど、どこに行った?折角葵君を見つけたのに。」
野田さんはキョロキョロと辺りを見回す。
え、先生がいるの?どこ、どこに?
祐樹という単語を聞いて一気にテンションが上がった。
「お前らな……本当に周りが見えてない。そんなだから野田は彼女ができないし、葵はお人好しとか言われるんだ。」
「……先生……だぁ……」
俺がいた雑貨屋さんから先生が普通に出てきたので、抱きつくと嫌な顔をしてやんわりと手でブロックをされた。
「葵、ここ外。みんなが見てるからそういうのはナシ。分かるよな。」
「う……はい。」
そうだよね。
だけど、思ってもない愛しい人の出現に俺は明らかに浮かれていた。
「お久しぶりです、松山さん。葵の恋人の熊谷と申します。今日は葵がお世話になっているようですみません。お食事がまだでしたら一緒にいかがですか?こちらの野田が案内しますから。この間の無礼のお詫びをさせてください。」
先生は普通に躊躇いもず〝恋人〟と名乗った。思わず顔が赤くなる。
初めて人前でそんな風に言われた。
「……ええ……私は葵君さえ良ければ……」
松山さんが俺をチラリと見たけど、答えは決まっている。
「もちろん。いいです。」
きっとみんなで食べると楽しいと思う。
野田さんと先生の後ろを、松山さんとお店まで付いて歩いた。
先生のグレーのロングシャツが風でそよそよと揺れてインナーで着ている白シャツが見えた。黒のハーフパンツもハイカットのシューズもよく似合っていて格好いい。
すりすりしていつもの匂いを嗅いで落ち着きたいのを我慢しながら、やっぱり先生が好きだなと思った。
この人がいないと俺が俺でなくなってしまう。
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