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夜のドライブ3にしおりをはさみました!
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夜のドライブ3
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(葵語り)
やめろよ、という言葉が喉まで出かかったが、口に出すのは諦めた。たぶん島田は俺が本気で嫌がるようなことはしない。いつも俺の顔色を伺いながら近づいてくるのも知っていた。ぎゅっと腰にしがみ付いてきたので、ふわふわの髪を撫でる。猫っ毛でクセがあり、手触りもいい髪の毛だ。
「葵君、怒らないの?いつも僕が触ると嫌がるじゃん。」
「ん……たぶんそこまで嫌じゃなくなったのかも。くっつくくらいなら、別にいいよ。あったかいし。」
お腹が空いてきたので、さっきのコンビニで買ってきたおでんを食べる。大根に出汁が染みていてホロリと口の中で溶けた。温かくて美味しい。僕も欲しいと島田が言うので、無理な体勢の奴の口にも入れてやる。
「おいひい。ねえ、葵君。もしも……もしもね、熊谷先生と別れたら僕と付き合ってくれる?いつも言ってるからじゃなくて、本気だよ。そしたら彗さんともキチンと別れる。僕は葵君を守ってあげたい。男だから、守られるじゃなくて守りたいの。彗さんも好きだけど、同じくらい葵君が好きだから。」
たまごが箸からつるりと滑って出汁の中に落ちた。恥ずかしいみたいで、抱きついたままこっちを全く見て来ない。大胆なのか小心者なのか分からないな。俺だって男だし。
辺りは暗くなり、一層冷え込んできて星がチラチラと瞬き始める。
「はぁ?そんなことまだ言ってんの?…………………しょうがないな。先生と別れたら考えてみるよ。でも、絶対に無いと思うから期待しないで。それより折角海に来たんだから、一緒に見ようよ。星が出てきた。」
俺が空を仰ぐと、つられて島田も顔を上げる。
「約束だよ。忘れないでね。うわぁ………星が綺麗だ。葵君、今日は一緒に来てくれてありがとう。ふふふ、楽しいね。」
島田がどさくさに紛れてぎゅっと手を繋いできた。手ぐらいなら、まあいいか。そのうちどんどんやることがエスカレートしていきそうな気がして、徐々に絆されていく自分が怖かった。
あまりに寒かったので、小一時間で撤収する。帰りは彗さんのお兄さんの話で盛り上がり、あっという間だった。
先生の家で降ろしてもらい島田とは別れた。
島田と友達になって3年になる。気心が知れた友人は彼が1番だと思う。
別に今更嫌いになんかなる訳がない。こんな性格だと分かっていて友達になったのだ。嫌ならとうの昔に疎遠になっているだろう。
島田と恋人になる未来も面白いかもしれないなと思ったが、恐ろしくなり途中で考えるのをやめた。
「ただいま………って誰もいないか……」
しいんとした室内へ1人で入り、携帯を確認した。先生からはさっきの着信以来何も来ていない。
大人しくシャワーを浴び、つまらない深夜番組をぼんやりと眺めた。意地でも帰ってくるまで起きてようと思ったが、瞼が勝手に落ちてくる。
日付が変わり1人寂しく記念日を終えたら、いつの間にか寝落ちしていた。
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