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たまには外食もいいものですにしおりをはさみました!
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たまには外食もいいものです
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『とらないで』
誰だろうか。
『もう、これ以上俺からとっていかないで』
泣いている。
『僕を、1人にしないでよ』
真っ暗闇の中で小さな男の子が悲痛そうに、そう叫んでいる。
誰だかわからない名前を呼びながら、泣いている。
俺はその子に手を伸ばす。
なぜだか無性に抱きしめてあげたい。
『※※』
ふと声がした。
きっと名前を呼んだのだろうその声は、その音はどこか酷く懐かしい。
呼ばれたその子は顔を上げ、あぁ君は……
「あさにぃー!!!」
「ふぐっ、」
うっすらと意識が上昇していた時、可愛い弟の声が聞こえたと思ったら重みを感じた。
「こら薫、どきなさい」
朝っぱらからカスカスな声で、上にのしかかる弟に呼びかける。
珍しいな、薫の方が先に起きてるなんて。
「あさにぃ、お腹減った!もう昼前だよ!?」
「えっ!?」
そう言われて勢いよく飛び起き、時計を見るともう11時過ぎ。
ーやってしまった。
俺はあまり寝起きというものが良くない。
というか、悪い方だとも思う。
だから休みの日なんて油断すると昼過ぎまで寝てしまうこともしばしば。
けど最近はそんなことなかったんだけど。
だって、
「疲れてたの?」
薫のご飯、作らないといけなかったから。
「いや、油断してた。ごめんな?」
そう謝ると、うーうん、と薫は首を振った。
「休みも大切!」
「……ありがと」
優しいな。
急いで顔を洗って着替えて、洗濯物を干してたたんで、昼食を作ろうと冷蔵庫を開けた。
「あー」
しかしその中にはほとんど何も入っていない。
そういえば最近買い出し行ってなかったな。
「悪い薫、急いで何か買ってくる!」
紺色のエプロンを外しながら、テレビを見ている薫にそう言った。
「んー、何もないの?なら俺も行く。
久々に服とか買いたいし」
「あ、なら外で食べるか」
「やった!外食!」
嬉しそうに喜んだ薫の頭を小突いて、
「なんだ、俺のご飯は嫌か」
と冗談を言った。
「んーん、あさにぃのご飯が1番だよ!」
そう笑って言ったことはお世辞かもしれないが、薫からそういう言葉が聞けただけで俺は嬉しいのだ。
そういえば駅前に新しいピザ屋ができていたと言っていた。
せっかくだし、そこへ行ってみようか。
「薫、食べたいものある?」
「なんでもいいけど」
「じゃ、ピザ食べるか?」
「うん!」
そういって2人でアパートを出た。
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