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兄の役割にしおりをはさみました!
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兄の役割
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あの後、帰ってきた薫に質問攻めだったが、まぁなんとかはぐらかしておいた。
納得はしてなかった様子だったけれど、渋々と理解してくれたようで安心した。
「もう、これからはちゃんと言ってよね!」
と、怒られてしまったが。
悪いと謝りつつも、頬を膨らませる薫が可愛かったのは、やはり兄の性なのだから仕方がないと思う。
まぁ明日からも普通に学校に行けると思っていたのだが……
「おはよ、薫ちゃん」
「オニーサンも」
「…な、」
アパートの外に出ると昨日の2人が入り口に立っていた。
なんでいるんだストーカーか。
と心の中で突っ込んだが、昨日送ってもらったんだなと推測するのは容易かった。
早速だけど、と薫の肩に手をまわす。
「俺ら薫ちゃんと学校行くから、オニーサン消えてくんない?」
「え、なんで俺あさにぃと行きたい!」
「まぁまぁ薫ちゃん」
「てかそのちゃんってやめろよ!俺女じゃないし!」
ごもっともだよ薫。
どうやら、こいつらは徹底的に俺が気に入らないらしい。
「行き先同じだし、どうやって消えろってんだよ」
まったく、本当に大学生なのかこいつら。
やることと年が比例してないぞ。
「昨日『薫の面倒見るのめんどくさい』って言ってたのに?」
「はぁ?」
「だから昨日薫ちゃんと遊ぶの変わってやったのに?」
「なっ、ふざけ……っ!」
とんだ言いがかりだ。
めんどくさいどころか、喜んでやってるのに。
え、と薫の顔がこちらを向く。
「あさにぃ、本当、なの?」
あぁほら、そんな泣きそうな顔しないでくれ。
「昨日は急な用事じゃなかったの?」
「違うよ?薫ちゃん。昨日ピザ屋のトイレで面倒くさいから変わってって言われてさ。弟に言う台詞じゃないよねぇ」
「最低なオニーサンだね」
いやいや、トイレに突っ込んだのお前らのせいだから。
なんで俺が悪いみたいになってんのさ。
「薫、違うからな。こいつら嘘言ってるか…っ、」
グリ、と足先に激痛を感じて視線を向けると、思いっきり踏まれていた。
「あ、あさにぃ……」
不安そうに俺を見る薫は、俺が足を踏まれていることに気づいていないのだろう。
脅しているつもりなのだろうか。
こんなので、
「薫、俺はそんなこと思ってないよ。嫌いだったら一緒にいない」
「えーなに、兄弟愛?」
「昨日と全く違うじゃーん」
昨日と全く違うのはお前らのほうだろうが。
くそ、と心の中で悪態を吐く。
「あ、あさにぃ、俺……っ」
「あっ、薫!」
ダッと、走り出した薫はあっという間に階段を駆け下り、見えなくなってしまった。
そういえば、薫足速かったな…なんて場違いなこと思いながら。
「あーあ、薫ちゃんかわいそう」
「……」
まだいたのか。
最悪だよ、俺と薫の間にヒビが出来て。
いい兄だったのに、どうしてくれるんだ。
いっと、優しい薫のことだから、友達も信じて俺も信じて、どっちを信じればいいのかわからなくなっているのだろう。
さながら、主人公のように、苦しみ悩んでいるのだろう。
「どけ」
俺はそんな主人公を、
「学校行くから、どけ邪魔」
追いかけて、捕まえて、抱きしめなければならない。
良い兄として。
またその地位を、立て直さなければならない。
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