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引っかかり
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「よしっと」
1人庭で、新しく買った花を植え終わり水をあげていたジョウロを片付けて軍手を外した。
ピンクと白と紫色の3種類の花が鮮やかに上を向き、己の存在を主張するように咲き誇っている花を見て、満足感が満たされる。
「子供みたいなもんだよな」
植えて水をやって育てて、散るのを見届ける。
短いけれど、1つ1つがとても大事なモノ。
「こいつらも気持ちよく育ってればいいんだけどな」
ジョウロやスコップを倉庫に戻すときに、一部だけ溜まっていた埃がなく、つい最近ここで起こったことを思い出し眉根を寄せた。
ー倉庫変えようかな。
使わないという選択肢はない。
溜息をついた後、すぐ後ろでザリッと足音が聞こえ、場所が場所なだけに素早く振り返った。
「な、なんだ神凪か」
最近は薫の件があり俺も徹底的に避けていたこともあり、しばらく顔を見ていなかったが此の時ばかりは神凪だということに安心したのもまた事実。
「何か用か」
ちょっと声が冷たくなってしまったことに気付きながら、そう尋ねた。
これは、ある意味チャンスなんじゃないのか。
あの日何があったのか聞けるチャンスなんじゃ。
「用は、ない」
「ならなんでいんの」
「……会いたくてきた」
ここにいると思ったからと。
なんだよこいつ。
少女漫画のイケメンか。
「な、んつーこと……」
ちょっとだけ嬉しいなんて思ってない。
思ってないぞ。
様になるからもっとムカつくし。
会いたかったから来ちゃった的な感じで言うなよ。
「会いたいってまたなんで、」
「…亜沙樹…」
「神凪?」
「……」
黙り込む神凪。
声は聞こえなかったけれど小さく何かをつぶやいた。
「お前さ、なんで薫にあんなことしたんだ」
まぁいいやと聞きたかったことを聞いた。
元々鋭い目がもっと鋭くなって睨まれているような感覚がした。
俺は、と神凪はつむぐ。
「俺はお前の弟が嫌いだ」
「え、ならなんで、」
「世界で1番嫌いだ」
嫌いならばなぜあんなことをしたのだ。
そう言う神凪のその顔はとてもとても怖くて。
目つきが怖いとかそういうんじゃなくて、怒っているようなそんな感じ。
苦しんでいるような、そんな顔。
それを見て、間違うなと自分に言い聞かせた。
苦しんだのは薫の方だ。
神凪が薫を嫌いならば、俺の敵だ。
「それなら、俺はもう神凪とは会えない」
「……」
「ごめん」
なんで俺が謝るのかわからないけれど。
それは考えるよりも早く口から出た。
「嫌だ」
けれどそれは嫌だと神凪は言う。
「また手を離すのは嫌だ」
「ま……」
またってなんだと聞こうとすると、遠くから薫の声がした。
「まずい、薫が来たら……!」
神凪がいたら薫が傷つく。
どうしようと思ったその時、強く腕を掴まれそのまま引かれた。
「こっち」
「えっ!?」
ガラっと扉が閉まり、そこが目の前にあった倉庫と認識する。
「まずいんだろ」
見つかったら、と。
だからって、だからって
「なんで俺まで引き込むんだ!?」
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