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募る疑問
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「どうした」
倉庫の扉を開けて、神凪はもう外に出ている。
そこからまだ動かない俺を振り返り尋ねた。
出ないのかと。
いやでるけど。
出るけどさ。
なんか恥ずかしいじゃんか。
チラリと神凪の顔を見ると至極不思議そうにこっちを見ている。
まぁでもいつまでもここにいるわけにもいかないと足を動かした。
「神凪さ、俺と会ったことあんの?」
「…」
倉庫の鍵を閉め、管理人さんに持って行こうとすると神凪もついてきた。
歩きながら無言もなんだからと口を開いた。
「ある」
「……いつ?」
「高校の時」
「え、最近か」
同じクラス、、にいたか?
ていうかそもそもは神凪って何歳なんだ?
近いと思って歳聞かずにずっとタメでしゃべってたけど。
「いくつ?」
「19になったばかり」
「あ、やっぱ同じか」
しばらく考えて、んーと唸った。
「ダメだ、思い出せない」
そんな俺を見て神凪はふっと息を吐いた。
「焦らなくていい」
さっきの待ってるはきっと、思い出すのを待っているということだろうか。
焦らなくていいということは、ゆっくりでも思い出して欲しいということだろうから。
俺は、と前を向きながら神凪が話し出す。
「俺は自分がこんなに我慢できないやつだとは思わなかった」
「?お、おう」
それからまた黙ってしまった神凪に何かを言う前に管理人さんの部屋に着いたので、鍵を返してくるとそのまま神凪とは別れた。
1人薫を探しながら、考える。
思い出して欲しいということは、思い出せるくらい近かった存在、だと、思う。
友達?クラスメイト?部活?
いや部活入ってないし。
できる限り思い出すも、その中に神凪はいない。
「んぁーー。だめだっ!」
思い出せん!
やっぱりほんとに人違いじゃないのか。
ガシガシと頭をかいているとふと、曲がり角から人影が飛び出してきた。
「うわっ……、か、薫?」
「あ!あさにぃはっけーん!」
そしてそのまま飛びつかれる。
おっとっとと、バランスを崩しながらもなんとか抱きとめて笑いかける。
「もー、どこ行ってたの!探したんだよ!」
「ごめんごめん、管理人さんと話してた」
嘘、だけど。
嘘はつくのは好きではないが、馬鹿正直に薫に神凪と話していたなんて言えるはずもないだろう。
「ま、いいや!帰ろ!」
「そうだな」
くしゃりと薫の髪を撫でてから、そのまま2人で家へと向かう。
楽しそうに話す薫の他愛のない話にわらって相槌を打って。
いつもの日常。
「あ、そうだ」
気になったことを聞いてみる。
「俺、神凪と知り合いだったのか?」
薫も同じ高校で同じクラスだったのだから、少しなりともわかるはずだと思ったんだけれど。
「………なんで?」
「いや、気になったから」
そうだね、と薫は手を口に当てた。
「いたよ高校に」
「やっぱり、」
ただ、と薫は続けた。
「最低な奴だったよ」
と。
「え、でも話してた時は楽しそうにしてたよな?」
「あぁ、……もう仲直りしたから」
「ごめんな」
神凪のことなんてあまり聞きたくないだろうに、俺の個人的な疑問のせいで話させてしまって。
うーうんと薫は笑う。
「颯佑はね、」
俺の大事なものを盗ろうとしたんだ、と。
それがなんなのかはわからないけれど、とてもとても不愉快だったらしい。
「ちゃんと返してもらったけどね」
ニッコリと薫は笑う。
あぁなぜだろう。
その笑顔が少しだけ怖いと思ったのは。
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