アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
誰がために 4にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
誰がために 4
-
「よしわかった」
「?」
「俺が作る」
「…………は?」
それはもう勢いで言ってしまったことだった。
立ち上がりそう宣言した。
「飯食わないなんてありえない。おまえ、食ってないのにそんなデカイなんて理不尽だろ…!……じゃ、なくて、あ、あーー」
思わず思ってもないことが言葉から飛び出し、慌てて両手で自分の顔を覆った。
それを神凪は何も言わずにじっと見つめている。
と、いうより何言ってんだこいつみたいな目で見てる。
うわ、恥ずかしい俺何言ってんの。
「ごめん、ちょ、たんま…」
顔を隠しながら神凪の視線を遮断するように手のひらを顔の前にかざした。
「いや、うん、ご飯を作りたいのはやまやまなんだけど、その、俺あんまり上手くなくてだな。
あれだ、飯を抜くと体に良くないからと思ったんだけど」
ちらりと神凪を見ると、その視線は俺ではなく俺が渡した小魚の佃煮が入ったパックを見ていた。
そしてそのまま蓋を開け、1つまみ摘まんで口へ入れた。
「………上手い」
「あ、よかった」
その言葉にものすごくホッとした。
まずいって言われたらどうしようかと思って。
「食べるのがめんどくさいんじゃなくて、作るのがめんどくさい」
「え、まさかお前1人暮らし?」
「あぁ」
「凄く嫌な予感はするし、正直聞きたくないんだけどまさか、夜ご飯コンビニとかで済ませてないよな?」
「よくわかったな」
長い長い溜息が出た。
高校生といえど少しくらいは作れてもいいものを。
「もー決めた。絶対弁当作ってやる。昼だけは栄養満点で食わしてやる」
「別にいいんだけど」
「よくないわ!」
どうでもいいというような顔の神凪の頭をベシッと叩く。
「どうせ自分ののついでだし」
「自分で、作ってるのか」
その言葉に少しだけ詰まった。
だって、自分で作らないとどうするのだ。
俺には誰も作ってくれないのだから。
「楽しい、からな」
まぁそれも嘘ではないから。
「……………変な奴」
それはお前には言われたくないなと笑いながら返した。それを見て、神凪はまた無表情で言う。
「笑った」
案外、と。
「可愛い顔してるんだな」
「………ほらご飯食べないからンな訳わかんないこと言うんだぞー」
俺が可愛いだなんて初めて言われたよ。いや嬉しくもないけれど。
可愛いは、その言葉は俺にとって薫のために用意されたものだから。
俺に向けられるはずのない言葉、だから。
適当にはぐらかした。
「弁当」
「ん?」
「楽しみにしてる」
「……うん」
また言い返そうと思ったが、なんだか必要とされたようで嬉しくて。
頷いてうんなんて柄にもない返し方してしまった。
その後すぐにチャイムの音が聞こえ、俺は扉へ向かう。
「そんなとこで寝て風邪引くなよ」
「あぁ」
早く授業に行けと言えるほどの仲でもないし、さすがにそこまでしたら図々しいだろう。
そして次の日から。
昼休みはこの空き教室で俺が作った2つの弁当を一緒に食べるという日課が出来た。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
43 / 92