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君がために 5にしおりをはさみました!
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君がために 5
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「出かけるか」
そう颯佑から言われたのはある日の昼休み、何時ものように昼ご飯を食べていた時。
その内容に思わず耳を疑った。
俺と颯佑は付き合って1年になるがこの昼休みから進展したことはほとんどない。
休日なんかに会うなんてこと、まだ付き合う以前に泊まらせてもらった時以来だ。
別にその先なんて望んでいなかったけれど、
颯佑の言うことはつまり、
「で、デート?」
「………そうなるな」
望んでいなかったけれど嬉しくないわけじゃない。
ていうかめちゃくちゃ嬉しい。
デートが、、とかいうより颯佑といれるからって言うのが大きいけれど。
「行きたいとこ」
「行きたいとこ、かぁ…………颯佑は?」
「………あさの行きたいとこでいい」
「って言ってもなー、んーんーーー………あ!スーパー!それも颯佑の家の近くにあったやつ!」
「………」
なにも言わなかったけれど、なんでそんなとこと目がいっていた。
「正確には、スーパー寄って颯佑の家行きたい!
ちょっと作りたいものあるんだけどさ、颯佑んちの近くのスーパーのほうが良い材料揃ってるし、なにより颯佑んち道具揃ってるし」
「………作りたいもの?」
「それは内緒」
ピッと人差し指を立てて笑う。
「やっぱ、だめかな?」
「あさが良いなら」
「よっし決まり!」
やった、と軽く笑うと颯佑もふっと小さく顔をほころばせた。
多分、うん多分だけど、最近元気のなかった俺を気遣ってなんだと思う。
結局颯佑のそんな言動ひとつでこんな浮き立ってしまうのだから、颯佑は凄い。
いや俺が単純なのか。
約束は今週の土曜。
なんかの行事で午前中まで学校があるからその後。
ってことは、放課後デートだーなんてな。
金曜日の今日なんてまだ1日あるのに夜も眠れないくらい楽しみで、心臓がドキドキして。
颯佑に早く会いたいと思ってしまう心を止められない。
「あさにぃ」
寝れないものだからネットでも漁ろうかと思ってパソコンの前に座っていた時静かに俺のドアが開いた。
「薫?どうした寝れないのか?」
寝れないの俺だから。
「うーうん。あさにぃ、明日何かある?」
「あ、夏樹さん呼びたいのか?大丈夫俺明日いないから」
「いないの?」
「うん」
きっと明日のことを思いか浮かべて相当変な顔でもしていたのだろう。
「颯佑と会うの?」
と図星を突かれてしまった。
あー、でた秘密にしていたわけでもないのに覆ってくる罪悪感。
「うん、学校終わった後から遊びに行ってくる」
「…………あさにぃ」
「ん?」
「行かないで」
いつの間にかドアの近くにいた薫が俺の前まで来ていて、くんっと服の袖を引いた。
「明日、僕についてきて」
「それは…………、ごめん、颯佑の方が約束先だったから…」
「僕より颯佑の方が大事なの?」
だから、その質問はずるいって。
「薫」
薫の肩に手を置いた。
「俺は薫のお兄ちゃんだけど、いつまでも一緒にいれるわけじゃないんだ。薫には出来るだけなんでもしてやりたいって思うけど、全部はできない。
…………、それに、俺は今はもう颯佑の方が大事。俺は颯佑が好きで、幸せなんだよ」
「っでも、颯佑はあさにぃの事好きじゃないかもしれないじゃん!」
「それはないな」
「なんで…?」
「それは…」
だって、伝わってくるから。
自惚れるわけじゃないけれど、何をするにもあいつの基盤にはきっと俺がいる。
颯佑が何かするのは大抵俺のためで、その度に好きだと伝わってくるから。
「わかるから」
言葉がなくとも空気で伝えてくる颯佑と言葉がなくともそれを受け取る俺。
その逆も然り。
不安になることなんてなかった。
だって俺と颯佑は互いが互いの世界は2人だけだったのだから。
「わけわかんない、だってあさにぃは僕の……っ!」
「ごめんな、薫。俺たち一緒にいすぎたんだよ。
俺、高校でたら一人暮らしするから、簡単に頼れなくなるだろうし」
「うそ、行かないでよあさにぃ」
「お前ももう自分を守れるし、夏樹さんにも守ってもらえる。だからもう俺はいらない」
薫と話しているはずなのに、早く、早く颯佑に会いたいと思った。
「うん、とりあえず明日はごめんな。明後日なら大丈夫だけど」
「………もういい」
「薫?」
「あさにぃなんて、……………」
その先の声は小さすぎて聞こえなかった。
けれど口の動きで何を言ったのかはっきりわかった。
あさにぃなんて、
ー壊れちゃえばいいんだ。
理解した瞬間に吐き気がするほどの胸騒ぎが襲った。
バックバックと嫌な音を立てる心臓が鳴り止まなくて、冷たい汗が首筋を伝う。
薫が出て行って静まった部屋の中で1人ベットにうずくまる。
颯佑、颯佑。
「早く、会いたい颯佑」
取り除いたはずの不安は大きくなっただけだった。
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