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完璧人間の崩壊(3)にしおりをはさみました!
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完璧人間の崩壊(3)
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~Satuki’s side~
…こういったタイプの人が怒ると、本当に怖い事は十分わかっている。別に、怒らせるつもりなんてなかった。入社した当初は、緊張とかで上手く話せなくて、ずっと愛想笑いをしていた。けど、もう何年か一緒にいると緊張なんてしなくなってきて。三浦さん自体、代表とかそんな堅苦しい感じの雰囲気じゃないから、下っ端の分際なのに素の自分で接している時がほとんどになっていた。ただ、飯塚さんにはまだ慣れていないから…。素の自分を出せなくて。
車に乗せられて、連れて行かれる場所はわかっていた。朝も居たこの部屋に戻ってきて、腕を強く掴まれたまま寝室へと連れて行かれる。…他人が昔から苦手だった。どうやって接したら嫌われないのか、怒られずにすむのか。少しでも雰囲気が変わる事に敏感だった。俺はきっと、三浦さんに親しく絡みすぎたんだ。距離感が。上下関係が、曖昧になりすぎていた。
「…何で俺が怒ってるのか、わかるか。」
「俺が、馴れ馴れしくし過ぎたから…。自分の身分を弁えてなかったからです。」
そう正直に答える。きっと、嘘をついたってこの人にはバレてしまいそうだから。それなのに、俺の答えは三浦さんの怒っている原因とは違ったみたいで、大きなため息を吐き、セットされた髪をぐしゃぐしゃにしてしまう。ボサボサになった前髪の隙間から覗く目が、怖いと思った。俺の方に伸ばされた手が、本気で怖いと思った。
「なぁ。何で俺はお前の事、名前で呼んだら駄目なんだよ。」
「…は。」
「何で、飯塚は良くて俺は駄目なんだ。何をしたら良い。どうしたら、お前の名前を呼ぶ権利が俺に与えられる。」
殴られるんじゃないかと、そう思った手は俺の背中に周り、体を引き寄せられた。抵抗する事が出来なくて、大人しく抱きしめられる。
怒っている原因が、名前?昼間のアレ?
「飯塚よりも俺の方がずっと、お前の事を知ってる。俺の方が何倍も、お前の事が好きなのに。」
「あの、怒ってる原因って…それですか。」
「あと、お前が俺とは飯行くの嫌がるくせに、飯塚に誘われた時普通に行くって言ったのもムカついてる。」
流れに乗って、ポロッと出た”好き”という単語。体が凍ったかのように固まる。だけど、それを三浦さんにバレたくなくて、気づかれないように言葉を返す。
これ以上、深く関わりたくないのに逃げる勇気がない。俺は、未だに光さんの事を忘れられていないのに、この人の気持ちに答えてあげられないのに、思わせぶりをさせているんじゃないかと不安が募る。
「…お前が、俺に対して恋愛感情がないのは知ってる。けど、やっぱ嫌なんだよ。お前が他の奴と話してるの見ると、俺の方がって比べるしイライラする。」
「…会社…辞めます。」
「何でそうなるんだよ!!」
何でって、俺の存在が会社の雰囲気を壊しているんだから、元凶である俺が会社を辞めれば済む話って事じゃん。俺さえいなくなれば、皆が険悪な雰囲気にならなくても良いし、代表取締である三浦さんがここまで俺に振り回されずに済む。それに、俺がいなくなった事で良い相手が見つけられるだろう。いつだって、三浦さんは俺の事を心配してくれたし世話もしてくれた。けど、そのせいで自分の幸せを逃しているんじゃないだろうか。その優しさのせいで、俺の事を好きだと勘違いしているんじゃないだろうか。
「俺は、お前のそういう所が嫌いだ。そうやって、解決せずに逃げようとする。」
「…そうですね。」
そう。俺の事を嫌いになってくれれば良い。
「だけど、それ以上に好きな所が沢山ある。そういう所だって、俺が改善してやる。だから、俺は絶対にお前を逃さないから。」
腕の力が強くなり、少し苦しくなる。それに加え、口を塞がれて呼吸がし辛い。少しだけ、泣きそうになった。どうして、そこまで俺に執着するのか。迷惑な存在でしかない俺に。その感情だって、いつかは消えてしまうくせに。跡継ぎだとか、親だとか。そういうのが絡んできたら、俺の事なんか必要なくなって捨てるくせに。信じたら駄目だ。
…それなのに、この温もりをずっと感じていたいとさえ思った。
「会社辞めるって言うなら、お前をここに閉じ込めるから。というか、もうここで仕事しろ。そうすれば、俺だって嫉妬しなくて済むし、お前が願っていた在宅ワークにもなる。ん、それで決まりだ。社員の奴らには俺から伝えておくから、明日からお前はここで在宅ワークな。」
「話の展開がおかしいです。辞めさせて頂けないのはわかりました。けど、在宅ワークにして頂けるんでしたら自分の家でさせてください。」
「やだ。お前は今日から、俺とこの家で一緒に暮らす事に今決定したから。それに、もう遠慮しない。」
「え、何がっ。」
さっきは、色んな事を考えていたから流されていた。さっきは押し付けられるようなキスだった。だけど、今は腰に手を回され逃げれないように頭を抑えられて、貪り尽くすかのように深い。
「返事なんてもう聞かない。お前が自分に自信なさすぎなのも、ツンデレなのも十分にわかったから。だから、俺は俺のやり方でお前に好きって言わせるから。」
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