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神の手 →side unoにしおりをはさみました!
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神の手 →side uno
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見た目は手に入れた「ベリーベリーふわとろチーズクリームパフェ」に、まるで蜘蛛の糸のドームのような飴細工が施され、キラキラする赤いシロップで、ブルーベリーと木苺をコーティングしていて、中はグラスからみえるかぎりだと、チョコレート生地のスポンジとピンクのクリームが折り重なっている。
掬ったスプーンの中身を口に入れると、バニラビーンズのクリームの蕩ける甘みとベリーの酸味が口の中に広がる。
掛け値なしの絶品。
「どうかな?同じような素材探したんだけど。まるっきり一緒にはならなかったんだけどね」
首を傾げて久亀は、オレに問いかけてくる。
こんなの作れるとか、このひとは、まさか神か。
思わず尊敬の念で、パフェのようにその甘いマスクを見上げてしまう。
「スゲェ、うめえ……っす。この店、こーいうの売ってるんすか」
食べる手を止めることが出来ずに、ゴージャスベリーの魅惑にとりつかれてしまう。
入るのは緊張すっけど、この人が売ってるなら買いにこれっかもしれない。
「メニューは、まだ、昔のままだから、普通のショートケーキとかしかないんだけどね。急に父が亡くなったから、フランスから帰ってきたばっかりで」
まだ、売ってねーのか。
売ってるなら、変装してでも買いに来る価値はあると思ったのに。
オレが残念そうな顔をすると、リニューアルしたら沢山メニューできるよとつけたしてくれる。
久亀は、オレが食べているのを嬉しそうに見つめてくるので、何だか気恥ずかしくなる。
「さっきの奴らは?」
「遺産相続とかで、うちも結構キツキツだからね。嗅ぎつけた地上げ屋さん。父が大事にしてた店だから売りたくないんだ。僕も、この店を継ぐためにフランスで修行したからね」
口調は柔らかいが意思は強そうな感じのひとだ。
まあ、普通なら囲まれた時点で売りますっていいそうだしな。
「あ、えーと、パティシエですよね。久亀さん」
宝物を作り出す、オレにとっては神の領域の人々。
「そうだよ。だから、この店を改装して新しい店を作るつもり」
嬉しそうに笑って、久亀は何度も頷く。
「じゃあ、改装したら買いにくるっすよ。夜まであいてる?あ、これ、ごちそうさま」
久亀は、完食して夢見心地のオレを眺めて、満足そうな表情でくすりと笑う。
「夜はしめてるかもしれないけど、君が来たら店をあけてあげるよ。だって君、すごく幸せそうに僕のパフェ食べてくれるから。……それと頭、かなり打ってるみたいだから、明日は病院に行ってね」
面倒くさいし、まあ、今だいじょうぶだから、平気だろうと思い、適当に頷く。
「ちゃんと、病院いってね。頭はあぶないんだからね。行ってきた帰りに、ココに寄ってくれたら、また、何か作ってあげるからね」
頭を指さして、絶対だよと告げた久亀の言葉に、オレは何故か素直に頷いていた。
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