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アルバイト →side unoにしおりをはさみました!
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アルバイト →side uno
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スパルタという割には、久亀は丁寧に作業を教えてくれた。業者との伝票の受け渡しと、材料の保管場所と移動方法。
主に力仕事系だったが、これをいままでこの人は独りでぜんぶこなしていたのかと考えると、尊敬に値した。
一緒に材料の入った袋を倉庫に移動する。
俺の半分くらいの腕の太さでどこにそんな力を隠し持っているのだろうと首をひねる。
「久亀さん、結構力持ちなんですか?」
「お菓子作りって、結構力を使うんだよ。泡立てるのとかね。ミキサー使えば楽なんだけど、絶妙な泡立ちはやっぱり手で掻き回すのにはかなわないからね」
にっこり笑いながら、倉庫の棚から容器を出して台に乗せて、粉の袋を逆さにして容器に入れ替えている。
へえ、喧嘩で発揮できないのは、多分したことがないからなんだろうな。
なんでもセンスっつーもんがいる。
図体や身体でなんとかなるってもんでもない。
俺は砂糖の袋を言われた容器に入れ替えて、久亀の横顔をながめる。
「本当はね、別の店舗とか借りた方がリフォーム費用とかもあまりかからないしって考えたりもしたんだけどさ。やっぱり、僕はこの店がすきなんだよね」
ざっーっと粉を容器に移しながら、久亀は吐息を漏らしながら呟く。
「大事なんだな。別にヤツらに負けてやる理由はないんだろ」
「それがね、父がしてた借金の借用書が債権者から、ヤツらに流れてね。僕の貯金でそれを戻したいんだけど、暴利を積み上げられちゃって。でも裁判するよ。裁判を阻止しようと、チンピラをよこしてるんだけどさ」
俺は周りにある材料の袋を容器に全部移しながら、肩を落とす久亀の背中をたたく。
「しっかりしてよ、店長。アンタのことは、俺、守ってやっからさ。まあ、チンピラ追い返すしかできねーけど。俺、アンタの作るお菓子大好きだしな」
渇みたいなものを入れて、久亀の顔を見下ろす。
まあ、1人で店をやってたら、不安だろうしな。
「ウノスケ君、ありがとう。心強いよ。愚痴ってごめんね。…………じゃあ、次は掃除の仕方を教えるから、店の方にいくよ」
少しだけ、久亀の表情が和らいだ気がしてなんだか嬉しい気持ちになった。
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