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127にしおりをはさみました!
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「まったりの定義が分からんが、ゆっくりと、時間を気にせず、あまり人混みの無い所に行く、でいいのか?」腕を組んで、何を考えているのかと思えば、ハミドは至極真面目くさった顔で考えている。
「定義って‥ざっくりとしか考えたことはないけど、そんな感じかな?」
「ほっこり、とはどう違うんだ?」そのまま、首を撚る。
こいつ、本当に考えることが好きなんだな。
「まったりとほっこりの違い?同業他社みたいなもんじゃねー」
「いまいち掴めんな。」
この話はここまでか、そんな風に思考を手放し、気持ちを切り替えている様子だった。ハミドはお箸を割り、器用にそれを使って駅弁を食べだした。
なんだろう、食べ方こんなに野性的だったっけ?
高校生の早弁並みにガツガツ食べている。
「掴めないもの、それがまったりだ。ハミドにも、そういう境界の無い事を知って欲しいものだな‥」
思わず、ハミドの真似をしてみた。
ハミドはペットボトルのお茶を飲みながら、きょとーんとして、俺の真似かというように箸で自分を指す。
ドヤ顔を作って頷くと、困ったように笑って、また食べ出した。
海岸の駅に着くと、汐の香りと少し肌寒い風が吹いていた。
この辺りは、サーフィンも出来るのだが、海岸を散策していると波の飛沫でマイナスイオンが発生するので創作活動が捗ると、作家達が住み着くという話をしていた。
俺は、そういうものかと砂浜の感触を楽しみながら、山の上に広がる海の景色を目指す。
もう少し行くと、鎌倉時代より前の戦国武将の悲恋が描かれた屏風絵があるそうだが、「今日は、シオンとまったりとするから‥」そう言って、今回は俺を楽しませるのが、目的らしい。
ハミドは俺をまったり楽しませる為に全力らしいけど、俺はハミドにも、まったりして欲しいわけで‥‥。
辺りに人が居ないことを確認して、そぉっと手を繋いだ。
手を見て驚くハミドに、「ありがとう。とても楽しい」って見つめると、眩しそうに笑ってくれた。
ハミドの人を、寄せ付けないオーラ、ああいうのも外に出してると、結構疲れるんじゃないかって思ってる。
俺の前ではもう少し、心の鎧を取ってのんびりして欲しい。
山の上に登り、眼前に広がる海の、夕暮れの夜景を見ていた。
だいぶ寒くなったからとジャケットを脱いで掛けてくれるという、相変わらずのエスコートぶりを発揮して、「どうだ。まったり出来たか?」と聞かれる。
「うん、出来た。ハミドは?」
そういうと、ハミドは小さく笑い、「また、呆れられてしまうかも知れんが、シオンが喜んでくれるのか様子を見ながらだと楽しいけれどもまったりはしないな。穏やかな気持ちにはなったが‥」
そう言って、俺の口にキスをした。俺からもキスを返して「それがハミドのまったり、なんじゃないか?」と言うと、大きく目を見張り、これがまったりかと言いながら、顎に手を掛けて口を開かせると舌を入れ、そのまま角度を変え奥に奥にと入ってくる。たまらない気持ちになって自分の腕をハミドの背中に絡ませ、俺達はキスを深く深く味わっていた。
あっという間に日は落ち、帰りの電車も外は真暗の景色だった。
ハミドはまた東京を留守にすると言っていた。
何でも今度の休みは北海道に行くらしい。
土産を楽しみにしてろと言うので、要らないから、またこういう思い出を沢山作りたいと言うと、可愛い、抱かせろと迫ってきた。
流石に今日は許して欲しくて、北海道から帰ってきたらな‥と返事をしたら、緑の眼は爛々と輝いていた。
明日から、またハミドと離れ離れの1週間が始まる。
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