アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
4 (彰)にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
4 (彰)
-
じめじめと、纏わりつく空気が鬱陶しい。
今までにないうじうじとした自分と相まって、俺を苛々とさせる。
==彰side==
「…っ、さっきからうるさいですよ、会長。」
「っあぁ、悪い。」
知らずの内に、人差し指で机をトントンと叩いていたら、補佐に怒られた。
…補佐と言っても、専属である雪ではなくて、そのシンユウの如月蘭。
時が経つのは早いもので、雪が倒れてから一カ月。
鬱陶しい雨が続く、6月となった。
あれから俺は、一歩も前に進めていない。
「もうすぐこれ終わりそうなんですけど、どうしますか?」
「あぁ、そしたら次はそこにある束、チェックを頼む。」
「わかりました。」
形だけでもせめて、と雪を隣に置くために決めた"専属補佐"制度も、全く機能していない。
こうやって俺は、生徒会室でもう一人の補佐と仕事をしている。
他の役員がいることもしばしばあったが、
会議以外で副会長はほとんど姿を見せなかった。
そして、雪も。
如月蘭は去年も会長職の補佐をやっていたから仕事も早く、
この学校についてもよく知っているから仕事をしやすい。
…俺が欲しいのは、仕事ができる補佐じゃないのだけれど。
「…また。」
「…なんだ?」
一枚の書類を見て、如月蘭は嫌な顔をした。
「…あぁ、見ます?」
如月蘭は席を立って、会長席のところまでやってきた。
補佐の席と会長の席は少し遠いのだ。
「…あぁ、親衛隊。」
「もう何度目ですか?」
「…。」
それは生徒会長 園田彰の親衛隊を公認してほしいという内容の文書。
何度か見憶えがあるそれは、俺を更に苛々とさせる。
「いつも通りの対応で頼む。」
「…もう、認めてしまってはどうですか?」
そろそろ面倒ですよ、と如月蘭はうんざりした顔をするが、
「いや、認めない。」、俺はそう言った。
親衛隊なんて、勝手に活動していろよ…と思わないでもないけれど、(といっても、それはそれで困るわけだが)
立ち上げた後でも本人がNOと言ったら解散らしい。
なんでもそれは"伝統"であり、
本人の許可がないままの活動は罰則ものなのだ。
「どうしてそんなに嫌がるんですか?」
生徒会は必ずと言っていいほど親衛隊ができるものですよ、と如月蘭。
「…。」
「こちらの身にもなってくださいよ、
毎回文書作って送らなきゃいけないんですから。」
「…不特定多数の奴らに好かれてるって、気持ち悪くないか?」
「…まぁ、少しこわいですけど…、
でもそれは、親衛隊があってもなくても同じでしょう?
親衛隊がなくたって、好意を持たれてることに変わりはないんですから。」
言われてみれば、たしかにそうだ。
だけどやはり、公認しようという気分にはなれない。
「俺が欲しいものは、こんなものじゃないんだよ。」
こんな、不特定多数の気持ちじゃない。
「…きですか。」
「は。」
「…雪、ですか。欲しいのは。」
「……。」
「二人、見てれば誰だって分かりますよ…。」
そう言って、如月蘭は俺の向こうをぼんやり見つめる。
「任命式のときだって、そう。
みんな触れようとはしないけれど、不思議に思ったはずです。」
"初対面"の相手に、感動の再会を喜ばれた雪。
たしかに第三者から見れば、奇妙な場面だったことだろう。
「雪はあれからずっとおかしいし、
副会長だって今まで以上に雪を気にかけてる。」
そこで、如月蘭は俺の目をジ、と見た。
「貴方が来てから、たくさんのことが変わってしまった。」
「…。」
当たり前だ。変えに来たのだから。
「…僕が、ずっと側にいたのに…雪の、側に…」
「…それは違う。
ずっと雪の隣にいたのは、俺だった。」
たしかに、俺だったんだ。
_
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
68 / 223