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【恋人にリンゴを】バレンタインデーキッスにしおりをはさみました!
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【恋人にリンゴを】バレンタインデーキッス
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目の前にはとろんとした瞳のサトル。そして、ワインの入ったグラスをくるくると回して、そっと唇をつけて一口飲む、というのを繰り返している。その様子は、扇情的な空気を醸し出してるのは間違いない。
イギリスでもバレンタインデーは恋人たちにとって愛を伝え合う大切な日だ。薔薇の花束やメッセージカード、プレゼントを用意して、伝える方法は様々である。だから、今日はサトルとホテルで、ディナーと宿泊の予約をしていて。
先にディナーを楽しんでいると、美味しい料理にワインも進んだのか、サトルはいい感じに出来上がっていた。
「サトル」
「……はい、レナード様? どうなさいましたか?」
それは、どちらかというと俺のセリフである。
サトルとは何度か飲んだことはあるが、食事の席だけでこんなに酔うはずはなかったのだが……。滅多に飲まないから、耐性がなくなってきたのだろうか。
ともかく、酔ったサトルは大胆になる。可愛さが倍増し、その上にエロさが加わったサトルを他の奴の目に入れさせるなんて、俺は気が気でない。
「食事も済んだし、それを飲んだら切り上げよう。飲みたいならまた部屋で頼めばいい」
「はい。二人きりになりますね」
照れてるのに、嬉しそうにサトルの瞳が細くなった。発情期の時とはまた違ったフェロモンが漂う。思わず、くらりとしそうになるが、グラスに残った酒を煽ることによって流すことにした。
サトルはふらふらしてるものの、思っていたより歩けるようだ。なので、腰を支えてさっさと部屋へ向かうエレベーターに乗る。そして、何事もなく部屋へ到着すると、サトルはふらりと部屋の奥へ進んでいった。
これはベッドルームへ直行して寝るパターンだな、と思っていたが、ソファーとローテーブルが置いてある位置で足を止める。それから俺にほうに振り向いたサトルの手には、赤い包装紙でラッピングされた小さな包みがあった。
「レナード様、知っていますか? 日本のバレンタインでは女性から男性にチョコレートをあげるのが習慣なんです」
サトルがそう言うのなら、中身はチョコレートだろう。しかし、あろうことか、サトルはその包み紙を開けて。
多分、俺へのものなのだろうが……酔ってしまっているから行動も支離滅裂だ。
「それで? 包み紙を開けてしまってどうするんだ?」
それはさておき、サトルへ問うと、箱に入っているチョコレートを一つ手に取る。
丸い形をした一口サイズのチョコレート。サトルはチョコレートを見る瞳を俺に向けて、ふんわりと微笑む。その頬はほのかに染まっていて。
「Happy Valentine's Day」
そう紡がれた唇にチョコレートが挟まれた。それから、どうぞ、と言わんばかりにサトルの瞼が閉じる。
「そういうのは嫌いじゃないな」
俺は誘われるがまま、手をサトルの顎に添えて上を向かせると、唇ごとかぶりついた。
チョコレートが押されて、口の中に入ってくる。口腔の熱さに次第に溶けていくチョコレート。大人な苦味のあるビターな味が広がっていった。
それを味わいながら、サトルの唇を味わうという贅沢なデザートだ。啄む唇はずいぶんと柔らかい。
「ん……」
夢中になってその弾力を楽しんでいると、サトルから鼻から抜けるような声が鼓膜を震わせる。俺はたまらなくなって、薄く開く唇の扉を大きくこじ開けた。コロリと転がったチョコレートは、繋いでいるところまで落ちて。その時──。
割れたチョコレートから液体が出てくる。その液体はお酒だ。咄嗟に腰を低くし、下からサトルへ唇を押しつけて零れないようにする。
そうすると、華奢な手が首に回ってきて。くしゃりと髪に絡めてくる指がくすぐったい。しかし、どこか心地よくそれを受け止めながら、俺はサトルの腰に腕を回して抱き上げる。簡単に浮かんだサトルの身体を運ぶ先はベッドルームだ。
それまでも淫らに舌を絡めてキスを続ける。ちゅ、と吸い上げる度にヒクンと細い肩が揺れるのが可愛らしい。チョコレートも、いつの間にかすべて溶けて、なくなってしまっていた。
ベッドにサトルを横たわらせて、サトルのネクタイを解く。しゅるり、とあっけなく解けたそれは床に投げられて。
「レナード様……」
吐息混じりに呼ぶ声は蜂蜜のように甘ったるい。下腹部の重みに、俺は微かに眉を寄せて、サトルの手を縫いとめる。
見つめてくる瞳は熱っぽく潤んで、とろとろになっている。まるで宝石のように光るものだから、惹かれるまま瞼に唇を落とすと、くすぐったかったのか子猫みたいな声が聞こえてきた。可愛らしくて、愛おしくて、これ以上は言葉では伝えきれない。だから、それを伝えるために、肌へ口づけ、最も美味なデザートを味わったのだった。
すう、すう、と穏やかな寝息が聞こえてくる。
サトルは疲れきったのか俺の横で寄り添って寝ていて、その表情は安心したものだった。この光景はいつまでも見ていられそうだ。横髪を撫でれば、気持ちよさそうに微笑んで、思わずこっちまで移ってしまう。
今日はバレンタインデー。恋人たちが愛を伝え合う大切な日。
俺はサトルの頬へキスを落とすと、小さな箱に入ったプレゼントをサトル側の枕元へ置く。薔薇の花と、メッセージカードを添えて。
Happy Valentine’s Day!
Hope you know just how much I love you.
End
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