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けれど、衝撃はなくかわりに力強く抱きとめられていた。
「ふせて」
僕の頭を押さえつけて、草薙は外を睨む。
僕を押さえつける手の反対の左手からは血がダラダラと流れて、ベランダにはビンの破片が散らばっていた。
電話で聞こえた一度目の前割れた音は、恐らくこれだろう。
あいつ、底を割ったビンを投げてきたんだ。
ゾッと背筋が凍る。
いや、今までもたまにガチのやばいやつはいたけどさ。
ここまで人生投げ捨てるような攻撃をされたことはない。
「蒼羽ぁ!!!出てこい!!!その男はだれだ!!!殺してやる!!!ぶっ殺してやる!!!」
声帯が切れるんじゃないかというほどの怒声。
本当にやりかねないと思った。
「蒼羽さん、警察呼んで」
こんな状況だというのに草薙は落ち着いた声色で、妙な安心感を与えてくれる。
「蒼羽さんはあんたが今投げたビンのせいで顔から血が出てる。もう十分だろ」
かすり傷ひとつ付いてないけど。
相手の気がそれで済めばいいというハッタリだろう。
むしろ怪我をしたのは草薙なのに、よくこの場でスラスラと嘘が出てくるものだ。
「お前誰だよ!そいつをよこせ!!!殺すぞ!!!」
「あんた捕まるぞ」
「黙れ!!!」
全く落ち着く様子のない男の声にも動じず言葉を交わす草薙の様子から、もう投げてきそうなものはないんだと察するけど、緊迫した状況に変わりはない。
あまりの騒ぎに、近所の誰かが通報したのか遠くからパトカーの音が聞こえてきて、こそっと顔をあげた。
ちょうど男もパトカーの音に気が取れたのかその方向を見ていた。
「しゃがんどけって」
草薙に手を引かれた時、男がぐるんっとこちらを見る。
けれど、その目は虚で目があったかどうかはわからない。
でも、僕には、その口元がにやりと歪んだ姿をはっきりとらえた。
「あーーーおーーーばーーー!!お前の笑顔を少しでも揺さぶってみたかったよ!!!!」
手元で、何かが、街灯に反射して光る。
刃物だと認識した瞬間、握る手を自らの首元に向かって振り上げた。
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