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鍵
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警察での取り調べが終わり、草薙と家に着いたのは明け方になっていた。
「つっかれたーーー。草薙先に終わってたんでしょ?帰ってよかったのに」
「いや、さすがに」
手当てをしてもらったのか、先ほどまでダラダラ血が流れていた左腕には包帯が巻かれていた。
「痛い?」
ツンツン突ついても、相変わらず草薙は無表情。
「言うほど傷深くないですよ。てか、災難でしたね」
「ほんとだよー。ちゃんと遊びって割り切れないならすぐやめるって話だったのにさ」
うんざり、とベットに寝転がると、草薙はさらっと僕の前髪を撫でた。
よく、草薙にはあんたいつか刺されますよって言われてたけど、そうなってもこいつならきっと見捨てないんだろうなって思う。
それでいて草薙は、助けてやったんだから俺だけを見ろ、とか恩着せがましい事言わないし、僕の好きにさせてくれる。
「あいつに攻撃された時は崩れなかったポーカーフェイスが、自傷行為する姿で崩れるのには、蒼羽さんの異常な女嫌いの理由だったりします?」
「……何の話?」
にっこり微笑めば、草薙は浅くため息をついてそれ以上聞くことをやめる。
何であの時、とっさに止めようと声が出たのか自分でもわからない。
頭によぎったのは、弱くて汚いあの女だった。
水商売だか、風俗だか、似たようなもんだけど、僕を生んだのはそんな女だった。
男と酒に依存して溺れて、僕のことだって誰の子だか自分でわかってるのかどうかすら怪しい。
ブランド物を買ってもらったり、売り上げが良ければ上機嫌。まるで自分が金持ちの仲間入りをしたかのような口ぶり。
でもそんなの、続くはずもなく、客と喧嘩しただの、客に本気になって捨てられただの。その度にあの人は僕を殴ったし、自分のことも傷つけた。
誰かに依存しなきゃ生きていけない。
おごってもらって生活してるくせに、自分が上位だと勘違いして痛い目を見て、金づるにしてたくせに勝手に依存して被害者ヅラをする。
女の汚い部分を嫌という程見せられた。
「気持ち悪い。こっち見ないでよ。全然笑わないし。可愛くない子」
そこにいるだけの僕を、女は蹴ってどかした。
そういえば、物心ついて一度も笑ったことなかったかも。
女の笑った顔も見たことがなかった。
いつまでこの汚い生活は続くんだろうと、踏みつけられながら思った。
「あ、今日男連れ込むから。鍵よこしな」
たまにそう言われた。
男が来る日に僕がいたら邪魔らしい。
また蹴られる前に鍵を渡す。
こんな日は家に帰れないし、歩道でもされたら家に帰ってまた殴られるから、そっと人気のない路地裏とかに隠れて過ごす。
寒いけど、あの女と同じ空気を吸うより、この時間の方が居心地は良かった。
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