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ある日、客に捨てられて、お前を殺して私も死ぬと騒ぐ女に、男は困ったように金を握らせていた。
今日は連れ込む日とか聞いてないから、普通に帰ってきちゃったけど、出て行った方がいいのかなと思いながらも、昨日殴られた足が痛くてすぐには動けなかった。
話を聞いていると男には家庭もあって、そのこともわかってたようだ。正直バカだと思う。
僕が相手の男なら、どうか関わらないところで勝手に死んで欲しいとさえ思うだろう。
男は僕を見ると、お前は子供いることも隠してただろ。俺は何も隠してない。最初からそう言う約束だっただろと言った。
でも、本気になっちゃったんだもんと女は泣く。
いつものパターンだと思った。
なぜ、わかっていてのめり込むのか。
惚れられてると勘違いするのか。
大体、真面目に働いて家庭のあるやつが、水商売の女を本気にするはずなんてないのに。
家庭ある身で裏切った男を世間ではバッシングするけど、それを正直に話して関係を持つならフェアだと思う。
約束を違えて、死ぬ死ぬ言うこの女の方がよっぽどアンフェアだ。
痛い足を引きずって、外に出る。
それから、数時間時間を潰して家に帰った。
その時、女は宙ぶらりん。
頭は一瞬真っ白だった。
顔が、ひきつる。
「は、はは……っ」
初めて、自分から笑いというものが出る。
僕が初めて笑った日。貴女は宙ぶらりん。
あの男のものだろうネクタイを首に巻いて、足はゆらゆらと揺れている。
バカだ。相手の男に捨てられて、死ぬことで一矢報いてやろうと思ったのか。
どこまで自己中で汚い女なのか。
ひどい世界からようやく解放されたこの日、僕は泣かなかったし、寂しくもなかった。
ただ、ただ、数日ひどい吐き気に悩まされ、大きな病院に入院した。
そこで、千と出会った。
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