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18歳以上ですか?
8にしおりをはさみました!
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8
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クレトが学校を変え、生活のリズムは少し変わった。
しかし、クレトの表情は大きく変わっていった。
明るく、と言うより穏やかな表情をすることが増えた。
深夜にうなされるのは変わりなかったが、以前のように覚醒するとぐったりするほどではなくなった。
1年もするとそれも減り、3年もするとほとんど無くなった。
さすがに13歳にもなってレオンと一緒に寝るのははばかられ、というより必要が無くなって、クレトの部屋のベッドはようやく役目を取り戻した。
引っ越してきたその日からクレトの部屋には彼のベッドが用意されていたのだが、どちらかが風邪をひく等、どうしても別々に眠る必要がある時以外はきれいにベッドメイクされたまま使われてこなかった。
買ってから何年もたつのに新品同様のベッドで眠るのは、最初は不慣れに感じたが、その内に当然のことになっていった。
そして、13歳になれば、夜間ひとりでいてもレオンが通報されることは無い。
しかしクレトは、それまでと変わらずレオンと一緒に“出勤”した。
バンドが入るよりも早い時間帯にクレトは時々ピアノを弾いた。
マスターが短時間ながらもステージを貸してくれたとレオンは感謝していたが、いつもマスターは「只働きさせてるんだけどな」と悪戯っぽく笑って返した。
クレトは毎回出してもらっている夜食の分だけでも返したいと思っていた。
自分のピアノにそんな価値があるかどうかわからないが、と思いつつ、そう伝えると、マスターは毎回「掃除も皿洗いも、夜食1回分じゃ足りない労働だぞ」と笑いながらクレトの頭をわしゃわしゃと撫でたものだった。
クレトの学習する内容はカウンターの隅でやるには難しい段階になってきたので、静かに勉強できる休憩室にいることも増えた。
それでもレオンのピアノが聞きたくて、バンドの入っている時間はカウンターの端の指定席で食事をしながらバンドの演奏に、シンガーの歌声に耳を傾けていた。
マスターは親切で、他の従業員も自分を可愛がってくれるし、レオンはバンドメンバーと楽しそうにしてるし、マスターとも相性が良い。
クレトは、この平穏な日々がずっと続くと思っていた。
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