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朝食を済ませ実家を出る。
「どこ行きたい?」
車に乗り込みながら聞くと少し考えて。
「公園行きたい。」
と、予想外の答えが返ってきた。
不思議に思い隣の深月を見ると、運転手に行き先を告げて俺を見る。
「琉聖、デートしよう?」
「デート?公園で?」
買い物とか映画とかじゃないのか?普通。
殆どデートの経験が無い俺の乏しい発想はその位の知識しか無かった。
「今日は天気も良いし、ゆっくり公園を歩いてのんびり過ごしたい。ダメかな?」
少し不安そうに聞いてくる深月の頭を撫でる。
「深月がしたいなら。」
そう言うと嬉しそうに微笑んだ。
いつもこんな幸せそうな顔で笑っていて欲しい。
俺は心からそう願っていた。
少し走って着いたのは、ここら辺では結構大きめの公園だった。
広い敷地内は緑が多く、池や芝生の広場まである。
休日ということもあって家族連れやカップがシートを広げて楽しそうに過ごしていた。
とりあえず俺達は公園の中を歩く事にした。
「ポカポカで気持ちいいね。」
秋もだいぶん深まった季節。
風が吹くと少しだけ冷たく感じるが、今日は天気がいいせいか心地いい。
少し前をゆっくり歩く深月の背中を少しだけ後ろの位置から眺める。
木々が黄色く色付く中を時々立ち止まって眺めながらゆっくりと歩く深月は、ちょっとだけ危なっかしくて目が離せなかった。
「琉聖、池がある。」
子供みたいに駆け出す深月を慌てて追いかける。
そこは広場から少し離れてるせいか人が居なかった。
それをいい事に深月に追い付くとそっと手を取った。
「先に行くな。」
そう言うと深月が微笑んで歩くペースを落とした。
手は繋いだまま池に掛かる橋をゆっくり歩く。
池の中程には東屋があって、そこで少し休憩する事にした。
木のベンチに腰掛けて池を眺める。
時々吹く風に水面が揺れる。
「深月、何で公園なんだ?」
素朴な疑問を打つけると俺を方へと視線が移る。
「2人きりでこうやってのんびりしたかったんだ。遊園地とか動物園とかって人が多くて落ち着かないし。この池の周辺って人が少なくて結構穴場らしいよ。」
どこの情報かは分からないが当たって居るから良しとしよう。
それより2人きりで過ごしたいって言われた事の方が俺には重要だった。
深月の何気ない一言が自分をこんなにも喜ばせてくれるなんて。
それだけで『幸せ』だと思えた。
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