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⑤にしおりをはさみました!
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⑤
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木村の行きつけである喫茶店は、鴨川ジムから歩いて十分程度。普段からロードワークで鍛えている一歩が全力疾走すれば五分近くは縮まる。
けれど、時計等視界にいれていない一歩は何分短縮されているかなんて今は気にならない。ただ、気になるのは宮田がまだ喫茶店にいるかどうかだけである。
「(…っくそ!信号に捕まった…)」
やっと目的の喫茶店を目前に交差点の赤信号で足を止める事になった。
普段は気にならないこんな待ち時間も今の一歩からすると、厄介でしかない。
「早く青信号になれ!」と呟く一歩の背後から、一人の巨体の男が声をかけてきた。
誰だ、と一歩が振り向いた途端、隣で信号を待っていた人達が交差点に進んで行く。
「あ!青になった…っ!」
それと同時に一歩の視界に入った人物は、鴨川ジムの先輩でもある鷹村守だった。
「た、鷹村さん!ど、どうもっ!」
いつもジムで顔を合わせるものだから、街中で遭遇する事は滅多にない。そんな、鷹村が今日は上機嫌なのかにこにこと微笑みながら、一歩にべったりとひっつく。
「よぉ、一歩ぉ!」
両肩をガッチリと鷹村の両手で掴まれた一歩は、身動きが取れなくなる。そんな中、慌てて交差点に向かって走っていく人達が一歩と鷹村の横を早足で通り過ぎていく。
「…もしかしてっ!」
一歩がもう一度、交差点に視線を向けた時には青信号は点滅していた。
こんなところでモタモタしている訳にはいかない!と、思う一歩だが、ジムでの千堂以上の力にビクとも身動きが取れない。
そうこうしているうちに、当然青信号は黄色信号に変わり数秒後には、赤信号に変わっていた。
「お?もしかして、お前急いでたのかぁ?」
交差点側に視線を向け、肩の力を弱める一歩に漸く鷹村が状況を把握した。
「…いや、良いんです。次の信号になったら行くんで…」
「ふーん………あれ?」
「え?」
一歩と同様、交差点側に視線を向けた鷹村が何かを見つけたのか目を細めた。その鷹村の視線を追う様に、一歩も交差点側に視線を向ける。
すると、鷹村と一歩の視界に入ったのは二人が良く知っている人物で一歩が今追い求めていた人物だった。
「貧弱君じゃねぇかー…」
「宮田君っ!!!」
「うぉっ、おい!いきなりでっけぇ声出すんじゃねぇよ!」
一歩に密着していた鷹村だったが、突然の一歩の大きな声に思わず一歩から手を離す。
すると、宮田を見つけた事で今が赤信号だという事をすっかり忘れてしまっていたのか、一歩が交差点を渡り始めようとした。
「おいっ!待て、一歩!赤信号だ!」
「え?」
交差点内に足を踏み入れた最中、背後から聞こえる鷹村の声と同時に、何かが一歩の身体にぶつかった。
それは一瞬の出来事で、一歩はぶつかった勢いとともにガードレールへと突っ込む様な形で身体を打ち付けられた。
「一歩ぉ!!」
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