アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
見たことあるんだよにしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
見たことあるんだよ
-
三回目のサークルの新歓は、小さな居酒屋を貸し切って行われた。
そもそも新歓の参加メンバーが少なかったからか、前二回の新歓よりは楽しかった印象がある。
そのサークルは、四年生と二年生しかいないサークルだった。四年生の参加率は悪くて、一人二人くらいしかいなかった。
居酒屋は、二年生の人の知り合いのお店らしかった。
「入学おめでとうー!乾杯!」
入学してからもう3週間が経とうとしてた。
入学おめでとうも言われなれた頃なのだが、新歓という名目上、そういう音頭になる。
ナリヤも俺ももう慣れてしまった。
四年生の音頭で、新歓は始まった。
俺は、先輩に勧められて、案の定お酒を飲む流れになってしまったのだが、その先輩は、はじめの一杯以外は勧めなかった。
「お前、名前は?」
「永沢っす」
「すげー髪だな。友達出来ないだろう」
程よく酔い始めたのだろう。名前は知らないが、先輩が俺の髪を撫で回し始めた。ワックスとか付けてるから、手が汚くなるからやめた方がいいのだが、酔っ払いには関係ない。
「永沢、友達の作り方なら、この中の奴に聞くよりな、もっと適任な奴がいるから!」
先輩がそう言うと、周りの先輩が野次を飛ばす。
「おお?お前ら、荒木よりコミュ力ある自信あんのか?あぁ?」
途端に、笑いが起きて、「そりゃ、無理だ」と言い始める。
どうやら、この場にいない『荒木』という先輩がコミュ力素晴らしく、友達も多いらしい。
俺は、そんな見たこともない『荒木先輩』に憧れたわけだが、この時、『荒木先輩』=ガクだということには、気付いていない。
「荒木は、来れたら来るって言ってたけどな。どうなるかな」
「あいつさ、女友達も多いし、コミュ力あるから女湧いてでるくらい近くにいるのに、彼女とか聞かねーよな」
「いや、あいつには年上の彼女がいるって専ら噂だぞ」
「あいつ、結構フラフラしてるから、意外と取っかえひっかえだったりな」
とにかく、俺の印象的に、荒木という人物は、
・コミュ力ある
・友達多い
・女にモテる
・恋人は不明
・バイトは居酒屋
・謎が多い
って感じだ。
「おい、永沢。荒木さんに会ってみたくないか」
極めつけが、楽しそうにそう言ったナリヤだ。
この時、ナリヤも皆から高評価の荒木という人物に会いたかったみたいだ。
「ああ、まあな」
俺はというと、そんなに会いたいというわけではなかった。皆から高評価の奴にいい奴はいない。それが、その時期の俺の考えだった。
会も終盤に差し掛かって、そろそろ二次会に移ろうかという時に、その人はやって来た。
「お!おい、新入生。こいつが、荒木だぞ」
「なに?僕の何を言ったの」
荒木という人物は、想像以上に男前だった。
どこかのアイドルグループにいてもおかしくなさそうな顔。バスケットボールの選手ですか?ってくらいの高身長。オマケに笑顔が素敵なその先輩
は、皆から慕われていた。
俺は、この時、他の新入生とは違うことを考えていたと思う。
俺は、こんなイケメンな先輩を捕まえて、「前に会ったことありますか?」なんて言えなかった。
「おい、永沢。お前、二次会行く?」
ナリヤは行く気満々のようだった。
でも、この時の俺は……
「いや、俺は行かね」
ナリヤは俺の発言に少し驚いたようだが、それ以上何も言わなかった。
「そうか。気を付けて帰れよ」
「おう。お前も終電気を付けろ」
俺は、二次会には行かなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
6 / 36