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春の章一 風光るにしおりをはさみました!
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春の章一 風光る
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始業式の後、各教室でHRが行われ、一年生は明日、実力テストがあることを告げられると、室内にどよめきが起こった。
可児は心の中で、何でやねんと突っ込んだ。
──カリキュラムに書いてあったやん、読んでへんのか?
可児は周りを見渡した。
受験から解放され、春という浮き足立つ季節に、共学というおまけが付けば、嫌でも性春まっしぐらに突入できる環境に、水を注がれては怒るのも無理はない。
可児は溜め息をついた。
「可児、後で職員室に来るように」
ざわめきの中、HRは終わり、担任が可児を呼んだ。
「…はぁ」
担任が教室を出ると、生徒は各々に立ち上がり雑談を始めた。
中には一目散に教室を出ていく者もいた。
「可児、帰ろ」
遊命が呼び掛けた。
「いや、何か担任に職員室に来いって呼ばれてん。遊命、先に帰って」
「ん、分かった。また明日な」
「ん」
遊命が先に教室を出ると、後を追うように可児も出ていった。
階段を降りきった廊下で遊命の後ろ姿を見送ると、可児は足早に職員室へと向かった。
何処からかピアノの音が流れていた。
遊命はその音に気付き、暫く音が流れてくる方に神経を集中させた。
生のピアノの音は、時々春の強い風に掻き消され途切れた。
遊命は聞き逃さないよう、音が近くなる方へと歩き出した。
聞き覚えのある曲を、ピアノに併せて心の中で繰り返す。家でも妹が弾いていた。
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