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初夏、後悔にしおりをはさみました!
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初夏、後悔
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暑い。こんな都会でも、心なしかセミの鳴き声が聞こえる。
今年ももう、ゴールデンウィークがすぐそこまで近づいていた。
目の端に映るカレンダーにそんなことを思い、瀬戸は溜息をついた。
あの日から、すでに半月ほどが経っていた。
『ごめん、もう帰って…』
そう力なく言い放った、祐樹の顔が頭から離れない。
怯えた、全てを拒絶するような表情。
どうすることもできず、彼の部屋を後にすることしかできなかった。
そして、今も。
連絡一つ入れることができない。
友達になろうと言ったのは自分なのに、もう祐樹とは友達ではないような気さえする。
初めて会った日、面白いと思った。
瀬戸は職業柄、いろいろなタイプの人間と話す機会が非常に多い。
気難しい教授や捻くれた研究者と関わることも少なくない。
だが祐樹は、瀬戸が今まで出会った誰とも違っていた。
初めの、敵意むき出しの態度。
酔って少し赤らんだ、頬。
少しのことですぐに照れ、そうなるともとから綺麗な顔に可愛げが増す。
口は悪いが、なんだかんだ先輩を慕っている。
子供扱いされて、怒っていた。友達になろうと言ったら、下の名前で呼んでいいと言った。
連絡先を聞きそびれていたので、自分の勤務する大学の近くで彼の姿を見かけたとき、すごく嬉しかった。
その直後、事故に遭いそうになった彼を助けた。熱があった。心配で心配で、少し腹が立った。助かってよかったと、心の底から思った。
なんだよ、と舌打ちをしかけて、やめた。
何かしただろうか。
彼に何か、不快な思いをさせただろうか。
思えば最初から、彼に対してはそんなことばかり気にしていたような気がする。
嫌なときは、嫌な顔をするから。つまらないときは、本当につまらなそうにするから。
でも、あの時。
あの瞬間、帰ってくれと訴えたときの祐樹は、そこからは何も読み取れないような表情を浮かべていた。
怯えていたのか。怖がっていたのか。でも、何に対して?
俺、かな…。
もう一度、大きく溜息を吐いた。
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