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過去、嫌い
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『いぁっ…!やっ、あ”、あ”あ”ぁだっ!あっ…!うぅ、ん…!』
酷い焦燥感が体を襲った。もう、こんなもの見たくない。
夢だとしたら、いつ覚めるのだろう。
夢でないなら、これは一体なんなのだろう。記憶って、こんな風に手繰り寄せるもんだっけ。
こんな、幻覚まがいのものを見て?
自分にとっては終わったことで、本当に忘れてしまうほどには忘れてしまいたい過去だ。
だが、目の前の少年は。彼は、今まさに、その過去の中にいて。
本当に彼は自分なのだろうか、と思った。
いや、正確には違う。
自分は本当に、彼なのだろうかと思った。
世間知らずの大学生は、異国の地で一人ぼっちで苦しんでいた。
親切にしてくれる友達がいた。可愛がってくれるホストファミリーがいた。それでも、少年は孤独だった。孤独を感じていた。
今ならわかる。
ただの、ホームシックだったのだと。
だからこそ、寄り道などせずに帰ればよかったのだ。
再び、自分は彼だったのだろうか、と自分に問う。
別の、いや、同じ自分が答えた。
「彼は自分、自分は彼。でも、二人は違う。俺は今、一人じゃない。
上司や先輩に恵まれている。それに……」
少年の姿は、もうどこにもなかった。男達の姿も。
あの後、祐樹のことを町中探し回ってくれていたホストファザーに保護された。
ファミリーと真剣に話し合い、あの町を出ることにした。
新しい街、新しいホストファミリー。
そんなことを考える余裕などなく、ただただあの街を出て行きたくて。
別れ際、ファミリーは涙で見送ってくれた。
親切な人たち。ほんの少しの間であっても、本当の家族のように接してくれていた彼ら。
忘れててごめん。会いたいな、と思った。
自分が、自分に微笑みかけた。
「好きな人だって、出来ただろ」
ーーー好きな、…人?
顔が熱くなるのを感じた瞬間、白いモヤは跡形もなく消え、目の前が真っ暗になった。
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