アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
11にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
11
-
もしも身体が自由に動かせていたら、王子様は深く頭を下げていたに違いない。
こうされてしまっては、もう話を聞かない訳にはいかなかった。
王子様は緋色の瞳を潤ませながらはなし始めた。
「ずっと向こう……。西のはずれの小さな家に、一人のくたびれた男の人の姿が見える。彼は若手の劇作家で、毎日作品を書いているけど、近頃はこの寒さでめっきり筆が止まってるんだ。だけど、とうとう暖炉にくべる薪すら買えなくなって、すっかり人生に絶望してしまったみたい。彼の手にはペーパーナイフが握られている......」
「なるほど......」
ソウゲツは頷いた。王子様の言わんとしていることがすぐに分かったからだ。
この台座から動けない少年にとって、頼みの綱は自分だけ……。
「分かりました。それじゃあ、もう一晩だけこの街に留まろう。またサファイアを届ければいいですか?」
「ああ、サファイアはもう持ってないんだよ」
「では、どうすれば」
「ソウゲツ、もっとこっちに来て」
そう言われた男は、王子様の顔のすぐ側までやってきた。
「僕の目をようく見て......」
言われなくても、すでに男はそれを見ていた。
透き通るような緋色の瞳は、人一倍豊かな少年の感情を最も鮮やかに伝えてくれるから。
それは今、目の前にいるソウゲツの姿を映してキラキラと切なげに輝いていた。
「キレイでしょう? 僕の目は、とっても珍しい東洋のルビーでできているんだ」
まさか......。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
170 / 206