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信用 3にしおりをはさみました!
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信用 3
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千景さんが突然俺の家に来た日から数日が経った。
…が、未だに蓮見さんとのわだかまりは残っていて
夕飯どころか連絡さえ取らない日々が続いていた。
「ため息ついたら幸せ逃げちゃうよ?」
グラスを拭く俺に声をかけてくれた千春さん。
今日も纏う空気がふんわり優しい。
「あっ…すいません、お店でため息なんて」
「お客さんいないしそんなの全然大丈夫なんだけど。
それより…痩せたでしょう?澄和くん」
慮るような目を向けられて、自覚するほどぎこちない笑いを返した。
「なにか、悩みごと?」
「ちょっと…。全部、自業自得なんですけどね」
悩みごと…なのかな。
極道のことも蓮見さんとのことも、何回考えても俺が悪いとしか思えない。
「…そう。
あのね?シェイクスピアが言ってた。
''恋ってのは、それはもう、
ため息と涙でできたものですよ''
って」
バーの開店準備の為にカフェの小物をしまう千春さんは、穏やかに笑いながら言葉を紡ぐ。
「今のは、僕の独り言ね。よし、準備おしまい!
後は僕1人で大丈夫だから、澄和くん上がって。
ありがとね」
はっと息を呑んで千春さんを見る。
千春さんは、なんでもないようにニコニコ笑っていた。
この人はいつも柔和なのに時々、すごく確信めいたようなことを言う。
お疲れ様です、と頭を下げ店を出れば空には凍った星がキラキラと光っていた。
今まで感じたことのない何かを感じているけど、これが何かと聞かれたら分からない。
気づけばもう駅に着いていて、ホームの人混みの中から背の高い立派なビルが見えた。
蓮見さんと駅で出会うこともなくなった。
もし避けられてたりしたら、それはちょっと悲しいなぁ…。
胸に少しの痛みを感じながら満員の電車に乗りこんだ。
────乗り込んで、すぐだった。
腰辺りに感じる違和感。
…誰かの手?
混んでいるから当たっているだけだ、思い込みたい俺の気持ちとは裏腹にその動きはエスカレートしていく。
サワサワと腰からお尻の方に移動していくのが気持ち悪くて。
誰がそんな事をしているのか突き止めようと身じろぎしようとするけど、あまりの人の多さにそれは叶わない。
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