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元カノ -3-にしおりをはさみました!
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元カノ -3-
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昼休みはいつものように宗田と2組へ向かった。2組の教室に入れば、後ろの黒板に早くも文化祭のことがメモされていることに気付く。
「文化祭の話、もうしたのか?」
宗田もそれに気づいたようで、人差し指を向けて糸田に聞いていた。
「ああ、ホームルームで時間余ったから、とりあえず候補だけ。まだ何も決まってないよ」
「そっちは何すんの?」
糸田が答えて、加藤がついでにと聞いてきた。
「こっちは話してもない。てかさ、講習とか授業多くて何もできなさそうだよな」
「え? なんで?」
頬杖を突いてぼやく宗田に問いかけたのは森野だ。キョトンとする森野に宗田も合わせたように首を傾げた。
「だって来月からのスケジュール見ただろ」
「見たけど、全員が一斉に揃わなくても準備くらいはいくらでもできるじゃん。授業は有るけど、それも見越して早めに知らせてくれてるわけだし。だったら俺らも早めに進めていけば良いだけじゃん」
森野の返答に宗田は軽く目を見開いた。
俺も宗田と同じように考えていたから、さらっと言う森野の言葉に、後ろの黒板のメモを見て、納得してしまった。
今朝のやる気なさそうなうちの担任を思い出して、担任によってこうもクラスの雰囲気が違うものかと感心した。2組の担任のヤマセンはホームルームが早いから羨ましいと思っていたが、よく考えれば早いということは効率的だということだ。
だから時間が余ったからさっさと教室を出るのではなくて、使うべき時間があるのなら生徒にその時間を託し、2組の皆は文化祭の話をすることにしたのだろう。
「なるほどなー。なんか考え方が理系って感じする」
そう言えばヤマセンの担当教科は数学だ。
「なんだそれ。理系文系関係ある?」
宗田が感心したように頷けば、糸田が可笑しそうに笑った。糸田が笑えば、宗田も自然と笑顔になる。
「…なんか二人、前より仲良くなってない?」
糸田と宗田が話しているのを見て、加藤と森野がこっそりと俺に話してくる。
前から宗田からのアピールで糸田にはよく話しかけていたが、糸田がこんなにも楽しそうに話すのはあまりなかったかもしれない。
「宗田は糸田のことが大好きだからな」
「それは前からだろ」
俺は何も答えていない。これは森野と加藤の会話だ。俺は何も言っていない。
おい宗田、お前の思惑は糸田以外にバレバレのようだぞ。
「そういや、宗田ってロリの後輩と付き合ってなかったっけ」
加藤が思い出したように言って、そう言えばそんな話を聞いたことがあるな、と脳の片隅から記憶を呼び起こす。
「ああ、あれ別れたみたいだぞ。マネの子が言ってた。一か月くらい前だったかな。予選の前くらいだ」
あれ?と俺が疑問に思う前に森野が言った。
ということは、糸田にアピールし始めてから別れたということだ。
「てことはさ、宗田のやつマジで…」
加藤が言いそうになった言葉を森野は掌をかざして止めた。皆まで言うなと首を静かに横に振る。
そして今も楽しそうに談笑する宗田と、その相手である糸田に目を向ける二人に、俺はなんだか嫌な動悸がしてやまない。
「井瀬、知ってるだろ」
そして当然の如く、加藤と森野の矛先は俺に向けられた。
そんな気はしていたんだ。さて、どうするか。
ここで肯定するのは簡単だ。だが世間体で言えば同性同士の関係なんてアブノーマルだ。偏見の目に満ち溢れている。簡単に俺がそのレッテルを貼って負える責任なんて何もない。
そこまで考えるのにコンマ1秒。
「…知らない」
俺が首を振れば、森野と加藤の腕が俺の肩に回って、円陣を組むように体を寄せられた。
「実は俺、AVは熟女ものが好きなんだ」
唐突に森野が内緒話をするように小声で言った。
「何の話だ」
そんな性癖知りたくない。
「俺はチカンものが好き。あと乱交ものも興奮する」
加藤も何故か自分の性癖を暴露してきた。そんな情報まじで要らないんだが。
「ほら、俺らは言ったぞ。人の性癖に何も言うつもりはない」
「宗田の性癖なんて知るかよ」
嘘だ。本当はかなりの変態だということを知っている。
「でも宗田が男もいけるかどうかは知ってるだろ。なあ、今までちゃんと向き合ってなかったけど、宗田って意外とマジで糸田のこと好きなんじゃないのか」
正解だ、森野。
「ロリの後輩より糸田を選んだってのは不思議でしょうがないんだけど」
それは俺もだ、加藤。
だが俺は頑なに首を縦に動かさなかった。
「俺は知らないから、何も話せないよ。仮に宗田がマジだったとして、お前らはどうすんの」
「どうするも何も、見守るしかないだろ」
「ただ、友達同士の悪ふざけとマジの感情じゃ、ちょっと見方が変わると言うか。俺らも色々覚悟することあるじゃん?」
存外に加藤が真面目な口調で話すから、俺も真剣に息を潜めた。
俺が思っていたよりも真摯に二人は宗田と糸田のことを受け止めようとしているのかもしれない。
だからと言って俺が簡単に口にできるような問題でもないのだけれど。
「…やっぱり俺が言えることはないよ」
俺が答えれば、森野と加藤はそれ以上何も言ってこなかった。
「まあ、糸田は良い奴だしな」
加藤が言った一言が、それでも俺の言えない部分を感じ取ってくれたのだろうと思う。
「てことはさぁ、ロリの子、今はフリーってことか」
円陣を解いてご飯を食べながら、加藤がふと呟いた。
「それがどうかした?」
「いや、有働喜ぶかなと思って。宗田と付き合った時落ち込んでたし」
「ああ、そういうや…。でも宗田の元カノってどうなんだろ」
森野の疑問に、加藤は考え込む。
有働がその後輩の子にどれほどの思いを寄せているのかは知らないが、本当に好きなら誰の彼女であっても気にしないんじゃないかな。と、俺は呑気に思うのだった。
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