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元カノ -4-
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宗田の恋心が密かに明るみになってから数日、文化祭の話は相変わらず出ないし、加藤と森野は昼休みのたびにニヤニヤと糸田と宗田のやり取りを見ている。
そんなある日、リビングのテーブルに置いてある広告が目についた。
それは新聞に挟まれた予備校の折り紙広告だ。
父さんか母さんが朝テーブルの上に置いて、そのままになっていたんだろう。
糸田も部活を引退したら塾に行くと言っていた。俺も将来のことは具体的に考えてはいないけど、とりあえず大学に進学しようと思っている。
そろそろ受験に向けて考えていかなければならない時期が迫っている。
俺はその広告を手に取って、他のチラシは新聞紙を入れているボックスへと放り込んだ。
その夜、仕事から帰って来た母さんに早速予備校のことを話してみると、特に驚かれることもなく話が進んでいった。
「ここなんか良いんじゃない? 夏休み前の入校で仮模試が無料で受けれるみたいよ」
俺よりも真剣にチラシを見比べる母さんが進めてきた予備校を見れば、学力検査を兼ねた予備校独自の模擬試験が無料で受けられると書かれていた。確かに自分の今の実力を見ておくのは賢明だと思った。
「行きたい大学はあるの?」
「まだそこまでは決めてない。…から、模試受けて考えてみるのも良いかも」
「そうね。私もそう思うわ。なら早速申し込まないと」
先に資料請求だけしてくれると言う母さんは、自分のことの様に考えてくれていてありがたい。
そして後日、早速届いた資料と共に入っていた模試の申し込み用紙を書きこみ、予備校の入校申込書と親の同意書を同封して、ポストへと投函した。
翌週の月曜日、朝のホームルームでは5組でもようやく文化祭の話が出された。文化委員が呼ばれて二人が前に立つ。
事前に打ち合わせでもあったのだろう。たどたどしくも淡々と連絡事項が読み上げられていった。
文化委員の仕事が終わると再度担任が話し始めた。
「最後に、来週から放課後に面談が始まるから、各自忘れないように残っていること。以上だ」
そう言って担任が教室を出ると、ざわざわと教室が騒がしくなる。
「ねえねえ宗田くん。文化祭は模擬店しない?」
ホームルームが終わった途端、二人の女子が話しかけてきた。一人は文化委員で、話しかけてきたもう一人の派手めな子はたぶん友達だ。
「模擬店? 何するの?」
宗田は若干面倒くさそうに振り返るも、せっかくの提案を端から否定せずに聞き返す。
「パンケーキとかクレープを仮装して売ったら面白そうじゃない? 宗田くん達が店に出たら人気出ると思うんだ!」
「仮装かあ。俺は別に良いけど、女装とかは勘弁してよ?」
「あはは、やだ~。それはそれで似合いそうだけど、宗田くんにはカッコイイ衣装着てほしいな」
女装は完全に宗田のギャグだが、女子たちは案外満更でもなさそうだった。
「タキシードとか白衣とか、ギャルソン風の恰好が良いと思うんだよね」
「あ、なんだ。それくらいなら全然いいよ。女子も可愛いメイド服着てよ」
女子を相手にする宗田は変態さを微塵も見せず、見事な優男に見えるから不思議だ。
「いいよ! じゃあ次のホームルームで提案するから、賛成してね。他の人たちにも声掛けてくれてると助かるんだけど」
文化委員が両手を合わせて小さく懇願する。
「おっけー。男子には一応言っとく。女子はそっちで言っといて」
「うん! ありがとう!」
そうして俺の隣では女子たちによる根回しが1時間目が始まるきっかりに成立していた。今までクラスの中心に居ることがなかったから、昨年も一昨年もこういうことがあったのかなと回想してみる。
まあ回想したところでモブな俺が思い当たるはずもないのだが。
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