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罠にしおりをはさみました!
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罠
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エレベーターを降りマンションから出る。
久しぶりに世間に出たユキトは、知らない町をひたすら走った。靴下で疾走する少年を通りすがりの通行人が振り返る。
――駅…いや、交番だ
息を切らしながらユキトは左右を確認する。
金を持っていない中学生でも交番だったら応対してくれるだろう。とにかく時任の情報が欲しい。
『ただいま入りました速報です』
電器屋の近くに差し掛かったユキトは、展示されている大型テレビの前で思わず立ち止まった。
ちょうどニュースをやっている。アナウンサーが真面目くさった表情で報じているその前で、ユキトは呆然とした。画面のテロップに釘付けになる。
そこには――
『朝霧グループ社長夫妻、自宅で何者かに襲われ死亡』
そう、書かれてあった。
ユキトは立ち尽くす。
自分が強いショックを受けている事に気付いた。
あんなに憎かったのに。殺したかったのに。清々する、はずなのに。
――お父さん…お母さん…
違う。
最初から憎かったんじゃない。少年は彼らが好きで、好かれたかった。いつかの読んだ本に『子供は親を選べないが心から憎む事も出来ない』との一節があった。
今、その通りだと実感する。新しい涙が、静かに頬を伝う。
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