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18
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それから僕らの関係が良くなることも悪くなることもない。
必要最低限の話をし、何かあれば「ごめん」としか言わなくなった。
それでもお互い自室に行くことはなく、リビングで同じ時間を過ごした。
自室に行ったら終わりだと二人とも分かっていたから。
二人の流れる空気が重い。
どちらも口を開かず、最近は笑うこともない。
大貴といても楽しくないと思うことが増えてしまった。
倦怠期なら乗り越えようと頑張れるけど、今回の原因を作ったのは紛れもなく僕で。
だからこそ、自分からはとても口を開けない。
大貴から話すこともないので、無言で重い空気が出来上がってしまう。
それに今日は生憎の雨。余計に気分も空気も重くて、僕は耐えられなくなり、何処かに行こうと決意した。
意を決し、ソファーを立ち上がる。
「どこ行くの?」
大貴が僕にそう聞いた。
僕は驚いて体をビクッと震わせてしまった。
「コ、コンビニに行こうと思って」
大貴は一瞬こっちを向き、再びスマホに目を移した。
「そっか」
余りにも呆気ない返事に僕はもうどうしたら良いか分からなくなり、傘なんて忘れて小走りで家を出た。
傘がないと気付いたのは、コンビニに着くちょっと前。
「あ、傘忘れた。びちょ濡れだ」
僕の体に次々と激しい雨が当たる。
濡れて濡れて濡れて。
コンビニには着いたけどこんな濡れてたら入れない。
僕はコンビニの外に突っ立った。
外はどんどん暗くなっていく。
僕にはもう帰る場所なんてないんだ。
前の家に戻っちゃおうかな、と良くない考えが頭を過(よ)ぎる。
しかし、それをしたらもう僕らの関係に終止符を打つ事になる。
それだけは…………
自分の顔を流れる雫が雨なのか、はたまた涙なのかは自分ですら分からない。
もうどうにでもなれ、と僕はしゃがみ込んだ。
傍から見たらホームレスのように見えるかもしれない。
濡れていて、コンビニの前までしゃがみ込んで。
誰もが僕を嘲笑って行く。
怖い恐いこわい…………
僕はギュッと目を瞑って膝を抱え込んだ。
全ての五感を封じ込めたい。
何も見えないように。
何も聞こえないように。
何も匂わないように。
何も喋れないように。
何も感じないように。
「優、」
そこに普段から聞き慣れている落ち着く声があった。
ゆっくり顔を上げると、大好きな人がそこに立っている。
「な、んで…………」
「風邪引くだろ、帰るぞ」
大貴は僕の手を引っ張り、無理やり立たせる。
自分の上着を脱いで、僕のベトベトな服の上に掛けた。
「これ濡れちゃうからダメだよ」
「良いから着てろ」
一つの傘の中に二人並んで帰る。
これは世に言う、相合傘というもので。
前まで大貴としたいなって思ってた。それがこんな形になるなんて。
「何で、来てくれたの?」
僕はここ一番の疑問を投げ掛けた。
「何となく」
嘘だ、何となく来るはずがない。
きっと僕が傘を忘れてったの分かってたから来てくれたんだ。
「まだ……怒ってる?」
「怒ってないよ」
大貴は僕の目を一切見てくれない。
ただ前だけを、前だけを見ていた。
それ以上は僕も何も言わなかった。
今までより空気が軽くなった気がしたのは、きっと大貴もだと思う。
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