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18歳以上ですか?
そんなわけで、テレパシー中。にしおりをはさみました!
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そんなわけで、テレパシー中。
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『これが、“学年トップの沢井くん”かぁ』
第一印象は、こんな感じ······たぶん。
外見とか関係ないけど。
新入生代表の挨拶とかしてた······気がする。
覚えてないけど。
要するに、俺達とは住む世界が違うんだろうなぁってくらいにしか思ってなかったのは、ほんと。
そんなんだから同じクラスになっても席順が前後になっても、新学期が始まってからの約一ヶ月間、沢井の声を聞いたことがないという超常現象が起こり得たわけで。
だけどさすがに、固定位置化した沢井の頭のつむじを毎日のように眺めてると、そこでなんとなく気付く。
──あ、こいつ他人に興味無いんだ。
いつも参考書とか文庫本と向き合って、背筋良く、お行儀良く、人形みたいに、誰とも馴れ合わず、それで良いと、思ってんだ。
だから笑わないし、怒らないし、いつも平然としていられんだ。
誰に媚びるわけでもなく、凛としていて、真っ直ぐで。
羨ましい──本当はどこかで、そう思ってた。
誰かの機嫌を取って、愛想振りまいて、モテる俺を演じてる俺なんかより、ずっと沢井は······。
あれ、おい、ちょっと、俺。
沢井と話すのに“何か”切っ掛けが欲しかったみたいな言い方すんの、やめようか。
「はぁッ?!お前、マジで別れたの!」
これまた良いリアクションだな、市川。朝っぱらからうるせぇよ、黙ってくんないかな。
教室で顔を合わせてすぐ、アヤカとの破局を告げた途端、わざわざみなさんにそのデカい声で報告してくれたりするんだから、ほんと感謝するよ覚えとけ。
そうなるともう俺の周りには、エサを与えられた魚みたいな面した仲間たちが集まってくる。
「へぇ······破局フラグ立ててから、一ヶ月くらい?それなりに我慢出来たんだね、渉のくせに」
言ってくれんじゃん、この女子共。
俺は唇を窄めながら「慰めて」とフザけて見せてはみたものの、気になるのは──。
相変わらず一人、静かに鞄から教科書を取り出す沢井のこと。
「まぁ、ね······“新しいの”見つけちゃったし」
別にその言葉に特別な意味はない。
言ってみたかっただけ、っていうか、あながち間違いじゃない、っていうのもなんか······ちょっとなんか認めたくない気もする。
沢井の後頭部を視野に入れつつ、俺は気取った素振りで席に鞄を置いた。
「もう次の候補がいんのかよ?極めてんなー」
「うわぁ······渉、サイテー」
俺の発言によって一斉に騒ぎ立てる奴らの声なんて、全然聞こえなかった。
俺は沢井を見ない。
沢井も俺を見ない。
あぁ、もう······。
こっち向けよ、沢井。
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