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18歳以上ですか？
そんなわけで、プリン中。にしおりをはさみました!
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そんなわけで、プリン中。
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渡り廊下の壁にもたれて、俺は小刻みに足を鳴らしていた。
昼休みになれば、賑わう校舎。
弁当やパンを持ちながら楽しそうに廊下を歩いてくる生徒達の隙間に、その姿を見つけて俺は歩み寄った。
相変わらず眼鏡だけど、独特で艶麗な雰囲気を纏うその姿は、遠くからでもすぐに俺の目に留まる。
「篠崎······」
「お。沢井くん、えらーいっ！俺が頼んでたの、ちゃんと買えたんだ。あー、マジ腹減った」
沢井の細い腕に抱えられた焼きそばパンとコロッケパンは、俺が“お願い”してた品物。
すぐに奪いあげて、俺が沢井の前へと足を踏み出した時。
「······なんで、ここに？」
背後から言われたその一言に、ぎくりと肩が上がる。
うるせぇな、悪いかよ。
そんなのはな、俺が聞きたいくらいなんだよ。
何も言わずに沢井を振り返ると、戸惑った視線とぶつかった。
そんな細い腕で······持ち切れなくてパンが落ちたらどうすんの。俺はそんなの、食べたくないよ？
大体さ、180cm(最近これ以上伸びない)の身長を誇る俺とあんまし背丈は変わんないくせに、お勉強ばっかしてるからそんな白くて薄っぺらいんだよ、お前は。
まぁ、俺もプライベートが忙しくて部活とかする暇は無いんだけども。
しばらく黙り込んでいた俺は無意識に無言の圧力を掛けていたらしく、堪えきれなくなったように、ふっと沢井がその視線を伏せた。
その仕草と表情に、思わず見惚れる。
なんだよ今の、それ······色っぽいな。
「篠崎って······甘いの、すき？」
「は？」
本人を目の前にして、堂々とやましい事を考えてた俺に、沢井の柔らかくて透き通った声が尋ねた。
「あ、あぁ。す、······」
珍しく沢井が俺に質問してきたもんだから、その不意打ちが無性に嬉しくて、そして言い掛けて気付く。
“甘いもの”が、ね。
分かってるって、分かってるよ。
分かってんのに。
なんで俺、こんなに焦ってんの？ただ普通に「すき」って、言うだけじゃん。
思春期のラブコメか何かか？意識し過ぎだろ、気持ち悪い、気持ち悪いよ、俺。
なんだか赤くなってる気がする顔を隠したくて、俺はさり気なく手のひらで口元を覆った。
「これ······よかったら」
そう言って沢井が俺に差し出したのは──。
「······プリン」
「······プリン」
プリンて。
急激に込み上がった笑いは、口元を押さえていた手のひらで塞がれた。そのせいで頬が、ぽんっと膨れる。
どうしたの、沢井。
なぜ、いきなり真顔でプリンなの？
しかも見事にハモったな。
とにかく必死で笑いを堪える俺に、沢井は全く気付いてない様子。それがまたシュール。
沢井とプリン。
全然似合ってねー、けど······なんかかわいい。
「ごめん、朝、騒いでたのが聞こえたんだけど······篠崎、彼女と別れたって」
申し訳なさそうに沢井が俯いて、俺の全身から熱がすぅっと引くのが分かった。
なるほど、このプリンの“意味”って。
「俺、失恋とか······よく分かんないけど、あんな風に笑っててもきっと、篠崎は辛いんだろうなって思うから······」
俺が彼女と別れたから、励ましてくれてる？
だから、······プリン？
子どもか、俺は。
心の中で突っ込んでみたけど、なんだろ、これ······ぽかぽかする。
俺を気遣ってくれてるのが、すげぇうれしい。
こんなパシリみたいな、いや······パシリか。とにかく何で沢井は、こんな俺に優しくしてくれちゃうわけ？
そう考えたら、胸の奥がぎゅうっと締め付けられて、息が詰まりそう。
失恋なんて······そんなんじゃないよ。
沢井が心配する必要なんて、ない。
俺がなんで、あの子と別れたか知ってる？
いや、俺にもよくわかんないんだけどさ。
もしかしたら、もしかすると、もしかするかもしれないんだけど──。
「······ありがと」
ひんやりと冷たいプリンを受け取ってから、俺はなんとなく沢井を目線だけで見上げる。
その瞬間、どくんっと心臓が跳ねた。
なんか······沢井、笑ってる？
微笑んでる、の方がしっくりくるような薄いものだけど······その綺麗な輪郭をした唇は、確かにふわんと揺れていた。
ただでさえ黒目がちなのに、軽く持ち上がった頬に埋まった瞳は、子猫みたいな。
初めて見る、沢井の──笑顔。
もう何も考えられなくて、ただ沢井を見つめることしか出来ない俺の、内側から聴こえる音が······さっきからどきどきと、うるさい。
どうしよう。なんなの、これ？
結構、やばい。
「······すき、かも······俺」
汗ばむ手のひらに乗っかった黄色い物体をぼんやり見つめながら、俺は小さく呟いていた。
「プ！プリン······っ、プリンが、だから！」
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