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沢井家のお正月-4(完)
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翌朝10時――。
約束通り、杵と臼、それからお汁粉の用意一式を携えて葵琉共々道場に出勤した。
が、肝心の発起人の姿が見当たらない。
「電話してみたら?」
「そうだな」
この時点で十二分に嫌な予感はしていたんだ。
電話がなかなか繋がらなくて嫌な予感は更に加速する。
「あ、志朗か。あけおめ~」
明らかに今起きましたという声で、嫌な予感はMAXに達した。
「あけましておめでとうございます。早速ですが」
「悪い。今日俺不参加で」
「は?」
「9時ぐらいに帰ろうとしたんだよ。だけど、最後の1回転で確変引いてそっから出っぱなし。日付変わったあたりでやっと終わってトイレに寄って帰ろうと思ったら、スロットで天井手前で捨ててある台拾ってまたこれが出っぱなし」
さいですか。
車でちょっと仮眠するつもりが起きたら今だったと。
「今からそっち帰っても、もう餅つき終わってるだろ?」
終わってるも何もまだ始まってすらいませんが。
「閉店までまだあるしもう一勝負してくかな。俺の分の餅は志朗にやるわ」
「はぁ……」
「何だよ、不景気な声出して。どうせ葵琉と仲良く杵と臼探しながら、蔵でイチャイチャしたんだろ? 楽しかっただろ?」
「……」
昨日の擽りっこの記憶が一瞬蘇って、ドキッとさせられる。
「本当に蔵でイチャイチャしたのか?」
「してませんっ!」
「何だぁ? ムキになるところが怪しいなぁ」
「とにかくもう切りますからね」
電話を切ると葵琉の方を振り向き、出口に促した。
「今日は中止だ」
「え~っ!?」
餅食べたかった~と頬を膨らませる葵琉を「餅なら外に食べに連れてってやるから」と説得して戸締まりをする。
「あれ、置きっぱなしでいいの?」
「どうせ今日は稽古ないからな。明日以降にみんな集めて餅つきしたらいいさ」
明日には1日休んだだけでウズウズするような稽古の虫の虎太郎たちもやって来るだろう。
餅つきはとうに終わったと思って呑気に帰って来る兄弟子にもたんと杵を振るって貰わないとな。
(完)
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