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暴君の失態2にしおりをはさみました!
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暴君の失態2
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小鳥が不憫に思えて、助は大きくため息をつく。
だいたい、何でわざわざ夜遊びの後に小鳥の部屋に行くんだか。
そのうえ抱きついてあちこち触るなんて意味が分からない。
そんな事をしなければ、小鳥にバレずにすんだかもしれないものを。
「小鳥、嫌なことは嫌だって、はっきり言ってやればいいんだぞ?」
「…嫌って、何がだ?」
好きな相手が、どこの誰とも知れない人間と自分の知らない所で不純な行為をしてきて、家に帰ってくるなりその手で触れられる。
助なら絶対に嫌だ。
無神経極まりない尊の行動をそう非難する助を、小鳥はぼんやりと見ている。
「…俺は、別に嫌だとは思ってない。」
「何でだよ?腹が立たないのか?」
「…尊が、他の人間に触れてるのはもやもやする。でもだからって、その手で俺を触らないで欲しいとは思わない。」
真っ直ぐに助を見て、落ち着いた声でゆっくりと小鳥が話す。
その雀色の瞳はとても澄んでいて、痩せ我慢をしているようにも、強がりを言っているようにも見えなかった。
「理由、聞いても良いか?」
嘘を言っているわけではないのはよく伝わってくるのだが、助には何故そんな風に思えるのかが理解できなかった。
「…多分、確かめてるんだと思うから。」
「確かめる?何を?」
「俺と、その他の人間との違いを。」
穏やかな口調で語られる小鳥の話に、助は耳を傾ける。
「普段から、乱暴になんて扱われたことはないけど…夜遊びの後、尊が俺に触ってくる手は特別に優しい。」
尊はとても丁寧に小鳥に触れる。その手は、まるで違いを探しているようなのだと小鳥は言った。
「夜遊びの後、必ず俺に触るのは…夜遊びの相手と、俺の違いを…尊なりに考えようとしてるんじゃないかと思う。」
他の人間と外でどんな夜を過ごしたのかは分からない。
自分の知らない所で尊が他人と肌を重ねたのだと思えば、当然嫉妬もする。
そう前置いたあと、小鳥が言葉を続ける。
「でも、尊は分かってるんだ。他の人間と、俺とでは違うって。それで、その違いは何なのかって、探してる最中なんだと思う。」
尊にとって、他の人間と小鳥が同列でないことなんて、助の目から見ても明らかだ。
小鳥は、尊の特別だ。
昔からずっとそうだった。
けれど・・・・・
小鳥への気持ちは、弟として、家族として特別だと頑なに思い込んでいる尊が、それ以上の気持ちにも少しずつ気付きつつあるのかもしれない。
そして小鳥は、そんな尊の変化を感じとっているのだろう。
小鳥の話を聞く限りでは、尊本人に気持ちの変化についての自覚はあまりなさそうではあるが。
「尊の気持ちがちょっとずつでも育ってるなら…俺は、今はそれで十分だ。」
ポツリ、ポツリと独特の心地好いテンポで話された小鳥の気持ち。
健気というか、一途というか。
好きな相手が、他の人間と毎晩のように抱き合っているという状況さえ、受け入れてしまえるなんて。
「14歳にして、すごい器のでかさだな。」
自然と、感嘆の声が漏れる。
「そのくらいの器がなきゃ、尊に片想いなんてしていられないだろう?」
普段の無表情をほんの少し崩し、ふわりと口許をゆるめながらの小鳥の言葉に、助は思わず雀色の小さな頭を撫でまわした。
「お前はホントいい子だなぁ!」
小鳥は頭を撫でられるのが好きなようで、気持ち良さそうに目を細め、助にされるがままになっている。
「そんないい子の小鳥に朗報だ。今晩は尊の夜遊びはない。」
「…どうしてだ?」
きっぱり言い切った助に、小鳥が不思議そうに首をかしげる。
「こないだ小鳥が事務所に来てた時、新しい仕事相手と顔合わせがてら食事に行くって話してたの覚えてるか?」
「…酒ぐせの悪い社長がどうとか話してたやつか??」
「そう、それだ。」
今日がその酒ぐせの悪い社長との食事会の日だ。尊は強制参加なので、夜の予定は塞がっている。
食事会には助も出席するので、終わった後は寄り道させず尊を家に帰すと小鳥に宣言した。
「ふらふらどっか遊びに行きそうになっても、とっ捕まえて責任もって家まで届けるから、今日は安心してていいぞ。」
いくら小鳥の心が広いと言えども、やきもちはしっかり妬いているわけで。
少しでもその心労を減らせればと、助は思った。
思った、のだが・・・・・
「あんにゃろー…どこ行きやがった。」
食事会の後チョット目を離した隙に尊が姿を消した。
尊を探して早足で歩く助を、すれ違う人が驚いた顔で見てくる。
多分自分は今、ずいぶんと必死な顔をしているのだろう。
家で尊の帰りを待っている小鳥を思えば、そんな顔もしたくなるというものだ。
食事会の後は真っ直ぐ尊を家に連れて帰ると宣言した手前、助は意地でもそれを実現させたい。
飲み比べと称して、尊と仕事先の社長は浴びるように酒を飲んだ。
相手も強かったのだが、尊は更にその上をいき、勝負は尊の圧勝。
尊が早々に社長を酔い潰してしまったので、食事会はあっさりとお開きになった。
まだ時間が早いからか、街には人が多くなかなか尊が見つからない。
珍しく尊もずいぶん酔いがまわっているようだったので油断した。
まだ遊ぶだけの元気が残っていたなんて…
タクシーにでも乗られたらおしまいだ。早く見つけなければ。
幸い、あの男は目立つ。あのスタイルに、あの顔だ。
自然と人の視線が集まる。
少し細めの路地を曲がると、見覚えのある黒髪短髪の後ろ姿が目にはいった。
急いで駆け寄ると、どうやら尊には連れが居るようだ。
何やら雰囲気の可愛らしい華奢な青年と話している。話す…というより、多分あれは口説かれている。
「おいこらダメ男。」
普段より数段低い声で呼び掛け、肩に手を置き振り返らせる。
「…何だよ助。」
「何だよじゃねーよ!そんな酔っぱらった状態でふらふらすんな!帰るぞ。」
酔って気だるそうな尊は無駄に色気がある。
しかも、足もとが怪しいほど酒がまわっているようだ。
こんな状態でうろつかせていたら、女でも男でも夜遊びの相手なんて次から次へと群がってくるだろう。
面倒が増える前にさっさと連れ帰ろうと、助は手を挙げタクシーを停める。
「君、悪いけどこいつは諦めて。」
「えー残念。すごい好みだったのにー。」
尊を狙っていた青年はそう言いつつもしつこく食い下がるつもりはなさそうだ。
「ま、すごい酔ってるみたいだしね。他を当たるよ。」
そう言って去っていく青年の髪は薄い茶色で、後ろ姿が少し小鳥と重なった。
今にも眠りそうな尊を何とかタクシーに押し込んで、助はやっと一息つく。
尊は相当酒に強い。普段ならいくら飲もうが平然としているが、今日は完全に酔っぱらっている。
多分、ここ最近の激務と夜遊びによる寝不足で異様に酒がまわってしまったのだろう。
清峰家に着く頃には、尊は半分意識がないような状態だった。
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