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15にしおりをはさみました!
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「ほら、さっさと席座れ出席取るからー」
ガヤガヤと話し声の残る教室から逃れるように視線は冷たく冷えた廊下へ向かう。その向こうで揺れる木の葉が擦れる音は聞こえず目を閉じた。
緋崎燃。
彼は実兄である桃に恋をしている。いつから好きかなんて知らないけど‥俺が燃と初めて会った時には既に気持ちはあったんだと感じている。
目が、行動が‥桃を好きだと物語っていた。桃は鈍感だし、ただからかわれてると思ってるから、燃が好きな子を苛める質だなんてつゆ知らずにぷりぷり怒るけど‥燃はちょいちょいこういう悪戯をしては気を引こうとしてる。
まあ燃とこの話しをした事は無いから俺が知ってる事を燃が知ってるかは知らないけど。
「永久」
「ぁん?」
「出席‥さっきから呼んでるんだけど?ボーっとしてまだ体調悪いのか」
「あ‥あぁ。すみません、えーと‥はい元気です」
「それ小学生の時とか言うよねっ」
俺の冗談に反応した壱が振り返る。ちらりと先生を見れば一瞬だけ目が合った。
「そう」
「だよねっ!
あれさー、体調悪くてもはい元気ですって言っちゃわない?」
「そりゃお前だけだ」
「嘘おぉ」
一瞬。
ほんの一瞬目が合っただけだけど、その一瞬先生は目を細めて頬を緩ませた。
だけどいつも通りに出席を取り続ける先生はやっぱり先生で、教師だと思った。
「よし!みんな来てるなー。
で‥連絡してた通り、今日から卒業式練習が入ります」
「「えぇー」」
「えーって言うな。
卒業式に向けて準備をしないといけないから少し時間をとって係を決めます」
袴田稔(はかまだみのる)
27歳
まだまだ若い袴田先生はさっぱりした性格と顔で生徒からの人気は上々。
バレンタインに生徒からチョコレートを沢山‥‥貰ってはいなかった。
正確には断っていたと言うべき。義理だろうが本命だろうが渡しに来た生徒1人1人に「お返しはしないから貰わないんだ。ごめんな」と言って断っていた。
『ねえっ!知ってる?
袴田先生好きな人居るんだって!』
『うっそ!』
『ホント!チョコレート渡しても受け取ってくれなくてさ』
『あー‥全部断ってるみたいだよね』
『だからさ!彼女居るから?って聞いちゃった!そしたら好きな人は居るよって』
『えぇー!』
『なんか凄い愛してるって感じだったなあ‥』
『惚れるなよ!』
『いやでもさ、好きな人は居るよって言った時の先生の表情がさ‥逆光でよく見えなかったんだけど。』
『おいっ!』
『なんかキラキラしててさ!凄い優しい顔してたような気がする!』
『気がするだけでしょ!
キラキラは逆光効果ねっハイハイ!』
『え、ちょっとー』
これは教室にいた女生徒の話しがたまたま聞こえただけで‥気になったとかではない。
好きな人が居る。
それが本当か嘘かは知らないけど、俺は袴田先生と唇を重ねる。そして体も。
約一年間。
恋人でもセフレでもない‥稔さんに何度も抱かれてきた。
そう‥何度もだ。
その度に稔さんは温もりと優しさを俺へ残していく。
いけない事をしてる自覚はあるのにその温もりと優しさ欲しさに稔さんの背中を抱き締めた。
もう‥
もうこの関係を終わらせなければいけない。
好きな人が居るなら尚更。
大体‥好きな人が居ようが居まいが俺はこの手を離すべきなんだ。
それが正解。
本当はもっと早く‥離すべきだった。
分かってた。知ってた。
ごめん‥
もういいよ
ありがとう
掴んでいたモノをそっと離すように‥握り締めていた拳と瞼をゆっくり開く。
俺の為にも
何よりも彼の為に。
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